ネコの音楽会
何の根拠もあるわけじゃないけど、ココアは歌うよりも楽器を使っている方が様になっていると思う。指が器用じゃなくても、人らしいココアなら練習すれば何とか出来そうだ。自分の勝手な想像だけど。ココアは「そうかなぁ」と呟いて満更でもない顔を見せていた。でも僕がココアに教えられる楽器は、何かあっただろうか。
「よし、私たちも一緒に踊ろう」
「え、踊るの?」
「なんだか踊りたくなってきた。一緒に踊ろう」
「でも、ボクは踊り方なんてよく分からないよ」
「私だって分からないさ。とにかく踊ろう」
そう言って、ココアは僕の手を引っ張って前に出る。激しく歌う猫に合わせて体をくねらせながら踊っている猫に合わせて、ココアは踊り出す。踊り、と言えるのか、よく分からないなんとも適当な踊り方だけど、ココアに合わせて僕も踊り出した。猫みたいに体をくねらせられないから、なんともきごちない踊り方だ。
時間を忘れるほどに、猫の音楽会は長く続いていた。空を見上げても、月は建物に隠れていて見えない。まだ夜の星空のままだけど、もうすぐで夜は明けるのだろうか。
そういえば、今はまだ夢の中だ。
夜が明ければ、夢から覚めてしまう。夢から覚めてしまったら、この猫の音楽会も終わってしまう。でもまあ、今は、そんなことを考えなくてもいいか。夢から覚めるまで、ココアと一緒に楽しく踊っていよう。