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有馬さんのついのべ

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10月10日


「おお神よ! 憐れな子羊をお救い下さい!」そう言いながら神父は果てた。僕はその様を見届けた後、傍にあったロザリオで‘彼’を貫いた。「哀れなのはテメーだ」


類稀なる劣等感の持ち主である僕は、類稀なる臆病ものである。そしてその臆病さから他人の顔色を伺い続けた結果、僕はクラスの人気者になってしまった。優しいわけではないのです。ただのこれは余興です。


全く、冗談じゃないわよ。私はただ親切でくれてやったのよ、玉手箱を。地上に戻って絶望した彼が、一気にそれまでの時間を取り戻せるように。もしも彼が絶望なんてせずに楽しく生きられたなら、玉手箱の事なんてすぐにわすれちゃうでしょ? 下らないのよ。地上って嫌ぁね。


まったくあのおばあさんったら気がきかないったらないわよ! 魔法使いなら服や馬車だけじゃなく、ちゃんとダンスも踊れるようにしといてよ! せっかく王子様に指名されたのに、逃げるように帰ってきちゃったじゃない! 靴は途中で脱げるし、サイアクだわっ!


私は使用人でありますので、斯樣な戀慕なぞ抱く事こそ罪で御坐います。なのに何故あなた樣は私に微笑んで下さるのでせうか。お戲れ、若しくは冷たい遊戲でせうか。いづれにしても、愚かな私はたつた其れだけで、天にも昇る喜びなのです。 


作品名:有馬さんのついのべ 作家名:有馬音文