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テッカバ

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殺人キャンパス 1


 ――死ねばイイっ!
 数時間前から頭の中を延々と駆け巡っているワンフレーズ。この六文字半の簡潔な言葉はきっと誰でも一度は思ったことがあるはずだ。
 それは大抵の場合友達同士のふざけ合いであったり、お互いむきになってしまった口喧嘩の到達地点だ。
 つまりはこの言葉が本気で使われることは非常に稀で、メールやら口頭やらで街中を飛び交っている「死ねばイイ」はほぼ確実に冗談の類なのだ。
 それともあなたは本気の覚悟で誰かが死ねば良いと思ったことある?
 本気の覚悟っていうのは単に強い憎しみや自暴自棄じゃなくその人を殺すときの感触、返り血、逮捕、一生付きまとう人殺しのレッテルをすべて考慮し受け入れた上での覚悟よ?
 よーく考えてみて。本当にその人は死んで良かったの? もしも今そんな事を考えていたならすぐに家に引き返して熱いシャワーでも浴びて落ち着くことをお勧めするわ。だって殺人って割に合わないもの。
 人を殺したら捕まるのよ! 刑務所に何十年も閉じ込められるし、マスコミを通じて全国に殺人犯の肩書き付きで名前が触れまわられる。きっと事件とは関係ない自分の趣味やら持ち物やらを晒されて、顔も覚えてないような小学校時代の同級生が「おとなしくてあまり目立たない子だった」とかテレビで知った顔で得意げに話すわ。中学時代の卒業アルバムに書いてあった将来の夢や作文に少しでも変った所があれば「この頃から既に被告は異常だった」ってニュースに取り上げられるし、ごく平凡な事が書かれていたとしても「どこにでもいる若者が殺人鬼に変わるまで」とか安っぽいタイトルの特集コーナーで主婦の暇つぶしにされるの。
 人一人殺しただけでコレよ……ね? 割に合わないでしょ?
 ……え?偉そうに言う割にお前もさっき同じことを考えていたじゃないか、って?
 そう、私は今人を殺そうとしている。その理由を説明するには少し時間を巻き戻さなきゃならない……


 一限目の講義を終えて三号館校舎の外に出た私を待っていたのは、顔を真っ赤に泣きはらした親友の姿だった。
「講義に来てなかったから心配したんだけど」人の流れを止めてしまっている事も忘れてかりんの顔を覗き込む「大丈夫?」
 無論大丈夫なはずがないのだ。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎