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箱は本当に必要だったのだろうか



ポン族の住む村は穏やかな気候と豊富な果物に恵まれ、海にも食用になる魚が獲れた。人々はのんびりと暮らしていた。

欲しい時に獲りに行けば、それらはいつもあるので、それをとりに行く以外の時間は大人も子供も歌を歌ったり、絵を描いたりして過ごした。そのための楽器造りや、紙造りもまた歌を歌いながら楽しくやっていた。

女達は植物を加工して衣服を縫ったり、貝殻で装身具を作ったりして、毎日が充実していた。そして歳を重ねて行って、皆穏やかに死んで行き、森の中に埋められた。それはまた、森の植物の栄養になるのだろう。

森には神様がいるという話が伝わっていたが、村の誰もが特に必要とすることも無いので、忘れていた。

村の人口が増えてきていた。それでもまた食物に不自由はしなかった。誰もが将来の心配もしていなかった。たった一人の男を除いては。


村には珍しいその心配性の男は、熟して誰にも食べられることがなく樹の下で腐っていく果物を見ながら、もったいないと思った。そして自分の子供の子供がこれを食べられるだろうかと心配になった。

男は森の神様に願い事をした。

「余った食物が腐らないで保存できる方法はないでしょうか」

森の神様は、久し振りというか、以前に願い事を叶えてやったのはいつだか分からないほど昔だったので、張り切ってありったけの力を使い、男に物が腐らない箱を作ってあげた。

男は、半信半疑ながらその箱を持っていって、果物と魚を入れて様子を見た。毎日取り出して見ても、腐る様子はない。

男はその箱を自慢したくなり、わざと季節外れの果物を食べながら村の中を歩いた。
「あれえ、それはまだ食べられないはずだが、どうしたんだい」
皆がびっくりして訳を聞き、皆争って森の神様の所に行った。
神様も皆が褒めそやすので嬉しくなって、最後は息も絶え絶えながら、一家に一個ずつ箱を作ってあげた。
 
それほど人口が増えてはいないのに、皆が当座食べる以上に穫って箱に保存してしまうので、だんだん競争になって、完全に熟す前に無くなることもある。

森にいた綺麗な鳥たちの姿が少なくなってきている。

魚も近海では穫れなくなって、少し沖にでなくては漁が出来なくなった。

穏やかだった村民の表情もとげとげしく、疑心暗鬼の表情になってきた。今は歌を歌う者もいないし、絵を描く者は小さな子供だけになってしまった。

そして、森の神様は、過労がたたってもう何も作り出せなくなっていた。