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清朝康熙帝時代の壺

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彼女は才色兼備のキャリアウーマン。学歴、勤め先、つややかな髪からつま先まで、自信の無いところは無い。
 しかし彼女が悔しがるのは、男運が無いこと。フッたりフラられたりしながら、売れ残りを認めざるを得ないところに差し掛かってしまっていた。
 という彼女が、とある日、骨董品屋に立ち寄った。そして一つの格調ある陶磁器に惹かれて眺めていると、老店主から声がかった。
「清朝康熙帝時代の壺。安くしておきますよ」
「いえいえ、見ていただけですので」
 彼女は直ちに遠慮したが、老店主は続けた。
「その壺には、『聊斎志異』のような怪異が宿っているそうです」
「あの有名短編小説集のような不思議、ですか?」
「はい。幽霊が現れるのですよ。美青年の幽霊が。それで、何と言うか」
 老店主は少し言いにくそうにした後、結局言った。
「女性向けのアダルトビデオのように、肉体的に貞操を汚すこと無く楽しむのに使われたらしいのです」
「えええ~っ?」
 そして彼女は、そうなのかもしれない、と内心妙に納得した。この陶磁器の模様は確かに美しいが、他のものと比べて群を抜いて素晴らしいという感じでもない。もしかすれば、彼女は、怪異の力で引き留められたのだ。
 彼女の興味を見抜いて、老店主は畳みかけた。
「女性の前にだけ現れるその幽霊はとても美しく、誠実正直だそうですよ。怪異かご都合主義か、日本語も解るそうです」
 最終的に彼女は、男運が無い自分を労わるために、この壺を買って帰った。

 その晩。
 ベッドに座る彼女の横に、本当に幽霊が現れた。目をこすっている彼は……
(べ、辮髪ぅ?)
 と驚かされる一方で、老店主が言ったとおりの整った顔立ち! でも清時代のあの辮髪! でも髪型を今風に整え直してくれればこれはアリ!
(う~ん確かにイケメン!)
「は、始めまして……」
 胸を高鳴らせる彼女が彼に声をかけると、彼も彼女のほうを見てきた。そして曰く、
「足デッカ無理!」
 言うや霞のようになって、壺の中へと消え去った。
「う~ん確かに自分に正直!」

(了)
作品名:清朝康熙帝時代の壺 作家名:Dewdrop