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端数報告7

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マスコミは嘘を鵜呑みにしたとしても


 
そうして21年の7月、不動の証拠を掴んで「勝ったぞ。これを押さえたからは敗けはない。どんな形でかはわからんがいずれこいつは露見する」とおれは考えたわけなのだけど、前回に書いた話を当時のブログに出した後で、
 
 
 
   「あ。そう言えば前の日曜の〈朝日〉にもあのデータが
    載ってるはずだな。最新のやつが。どうなってんだろ」
 
 
 
とも考えることになった。そこでまたカメラを持って図書館に行くことになる。
 
で、「えーとこれだな」と目当てのものを取って広げてみたのだけれど、ない。あるべきはずのところに〈陽性率と検査数〉のデータを記した記事がなかった。
 
 
 
   「あれ? どうなってるんだ」
 
 
 
と思って月曜から土曜までの新聞を全部調べてみたのだけれど、ない。どこにもあの記事がない。
 
掲載をやめたのかな、と思いながらその前の日曜のものを見てみる。すると、今度はちゃんと載ってた。次に見せる画のいちばん左だが、これ自体はさして変わり映えがない。
 
画像:21年夏のデータ
 
東京の陽性率が6.2で週に59301ってことは、日に8500を検査し「今日は525人」と言ってたってことだ。実際に21年7月初めと言えばそのぐらいだったと思う。
 
もしも検査する数が日に千人のままならば「62人」なんだけどよ。ちなみにこの計算をするには検査件数を700で割って陽性率を掛ければいい。それで新規感染確認数のその週の平均が出せるのだ。
 
わかりますね。これは簡単な算数である。21年春から初夏、ニュースは毎日東京の感染者として500くらいの数を言ってて、「しかし再拡大のおそれが。再拡大のおそれが」と繰り返すばかりであった。
 
というのもだいたい憶えてるでしょ。おれはこの結果をブログに書いて出した翌週、また図書館に行って日曜の〈朝日〉を調べた。しかし、またデータは載ってない。
 
 
 
   「うーん、やはり掲載をやめたか。
    トカゲ男が自分のしっぽがやってたことに気づいたのかな」
 
 
 
と思ったその後だ。8月になってニュースが「感染が大爆発!」と言い出し、東京で四千、五千人。全国で一万何千と、毎日猛烈な勢いで過去最大を大幅更新する感染の確認が、と報じるようになる。
 
それがこの夏のことだというのも皆さん憶えてますね。その割には患者や死者はそれ依然と変わらずたいして出ないまま。病院はどこもベッドはガラガラという話でもあったのだが。
 
当然、おれは「はん」としか思わず聞いて、そしてまた、「新聞のデータ掲載中止はこのためだったのかな」とも考えた。そりゃそうだろう。割合で6%のままだとしたら東京で〈四千〉という数を出すには日に六万五千ばかりの都民を検査しなければならない。〈五千〉という数を出すには日に八万の都民を検査しなければならない。
 
こないだまで八千だったのだからその10倍だ。1月7日に頑張っても一万七千てとこだったのだ。その四倍か五倍の数……そんなの、できっこねえだろうな。だからデータの掲載をやめた。
 
もうあの〈2447〉と違って確認なんかしてない数を言い出したということなのだ。「3456」とでも「4567」とでも言えばマスコミは疑いもせずに報道するのだから、カネをかけて数字を[作る]必要なんてないというのに長谷川博己が気づいた。
 
ということなんだろう。と、もう完全な証拠を押さえたおれは余裕を持って考えることができるのだった。そしていよいよ長谷川が狂って、〈インパール作戦〉か〈松本サリン事件〉級のデタラメをおっぱじめたということなのだと。嘘でもこれをやったならコロナが〈スカイネット〉のように自我に目覚めるて10万を殺してくれると思っている。
 
画像:シン・ゴジララストの長谷川 アフェリエイト:シン・ゴジラ
 
それでこのようにカッコつけて終えられると。そんな目論(もくろ)みに違いあるまい、長谷川と市川め。と思ったがしかし霞が関の中にこのふたりの暴走を許さんキャラもいるのであろうか。この〈波〉の騒ぎもすぐに尻すぼみになる。
 
 
 
   「ああちくしょう、おもしろくねえ。
    このまま行けばすべての嘘が露呈してくれたかもしれないのに」
 
 
 
とおれは思ったのだが、その後でまた図書館に行き、日曜日の朝日新聞を一応広げてみることにする。
 
すると、なんとあの記事が載っていた。三度の不掲載を挟んで四週ぶりのことである。それがさっき見せた画の真ん中のものなんだが、しかしおれは自分の眼を疑った。
 
 
 
   「そんなバカな。載るはずがない。これが載せられるはずがないんだ。
    正しいデータを公(おおやけ)にできるはずがない……」
 
 
 
おれの頭で考えると、その結論が百分の一秒で導き出される。そしてこの論理は正しく、間違いが決して有り得ないのもそもそもごくごく簡単な算数なのだからわかるのである。嘘だ。こんなことあるわけがない。
 
そう思いながら陽性率の数字に眼を走らせて、そこでまた「え」と思った。20.9パーだって?
 
 
 
   「有り得ねえよ!」
 
 
 
と今度は別の意味でそう考えることになる。検査数が週に94963ってことは日に13500人を東京で検査してるってことになるが、この時ニュースが「四千人を確認」と言ったとしたら陽性率は30パーぐらいでなければ計算が合わない。
 
そのくらいは暗算ができなくても見当がつく。後で電卓で計算すると、
 
 
   94963÷700×20.9=2835
 
 
だ。8月初めにニュースが言うのは2800くらいでなければならないのだが、実際の報道では「今日は4000。4200。4500……」と言ってたのだからてんで合わない。
 
が、それ以上にその翌週だ。青いインクで集計の途中にある数字が記され、22.8%とあるが、有り得ねえ! その頃ニュースは「今日は東京で5000人! 5200。5500……」なんて言っていたのだから。
 
それがどうして2%しか変わらねえんだ。ちなみに別の記事から見せると、
 
画像:6日と13日
 
こう。6日に東京で4515人。13500検査して陽性の者がそれだけいたなら、率は33%。
 
検算なんかしなくてもそれくらいだとわかるでしょう。13日には5773人。週に93765、日に13400を検査して陽性の者がそれだけいたなら、率は43%。
 
これも検算の必要もないだろ。この新聞に書かれる陽性率の数字は、30くらいに40くらいでないと計算が合わんのや。20.9や22.8なんて数になるわけがない!
 
なのにこう書いてるってことは、これがイカサマだってことだ。「正しいデータを公開できるはずがない」とおれが瞬時に考えたのはやはり正しい。嘘のデータだから公にできるわけだ。
 
画像:シンゴジラ出世に無縁な霞が関の外れ者 アフェリエイト:シン・ゴジラ
 
作品名:端数報告7 作家名:島田信之