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端数報告7

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カメラを持って図書館に行こう


 
そのようにして2021年、テレビがするコロナの話はどんどん頼りなくなっていく。「○○県に〈波〉が来た可能性があり、全国に広がる可能性が」だとか言ったがこれも不発。「五月連休に大きな〈波〉が来る。何万も死ぬ可能性があります」とかも言ったがこれも不発。
 
そんな話ばっかりとなる。それでもテレビは可能性カノーセーと言い続け、〈専門家〉の先生に、
「フィリピンではまだ人が死んでいるという話がありますし」
などとも言わせる。あのねえ、フィリピンというのはね、
 
画像:松本敏之パシャ!フィリピン
 
こういう国だよ。学者なんて言ったって、お前なんにも知らねえだろ。とおれはその頃ブログに書いていたもんだったが、だから今回はそんな21年の半分が過ぎた初夏の話だ。おれはこの時カメラを持って図書館に行ってみることにした。
 
新聞の縮刷版から嘘の証拠を見つけて撮ってやることはできないか、と考えたのだ。しかし何しろ縮刷版とは、
 
画像:縮刷版
 
こういうもんであるからして、「あかん。無理だわ」とすぐ思ったが、それでもぱらぱらめくっていると妙なものが目についた。
 
画像:日曜の記事
 
こんなようなページがあって右の文はどうでもいいが左の隅だ。一週間の感染状況を表にしたものなのがわかるが、しかしおれはちょっと目を止めただけで本のページをめくり続けた。
 
するとまた同じものが目に入る。おれは「おや」と思ったものの気にせずまためくっていったが、すぐまた同じ表のところで本が勝手に開きでもしたかのように止まった。
 
そこで初めて「ちょっとよく見てみよう」という気になった。ひょっとするとこれは何かの思し召しで、天の誰かがおれにこいつを見ろと言っているのかもしれない……なんて思いがよぎりもした。
 
とは言ってもほとんど期待なんてしてない。が、一瞬ののちおれは、雷に打たれたような衝撃を受ける。
 
表の中の、
 
画像:陽性率部分
 
この部分だ。陽性率と検査数だと? これこそおれが知りたかったが厚労省のトカゲが公開してるはずがないと思っていたものじゃないか!
 
まさか、まさかこんなものがあるとは! それもこんな簡単に見つけられてしまうとは! 驚きながら確かめると、このデータは毎週日曜、朝日新聞の同じところに掲載されてたことがわかった。20年の8月からだ。
 
で、本をトイレに持ち込んでカメラで撮ったのをまずいちばん最初のものとその年最後までの月末分を並べて見せると、
 
画像:20年7〜12月
 
こうなる。それでまず7月と11月末の東京の陽性率を見てほしい。なんでそのふたつかと言えばもちろん〈7〉はそれが最初のデータだから。〈11〉はこの年末に「感染爆発! 過去最大をまた更新!」と毎日言うことになる初めのデータだからだ。7月が6.5%。11月が6.4%となっているのがわかりますね。
 
6.5に6.4? と、ここでたびたびしてきた[志村けんが死んだ頃]の話を思い出してほしい。テレビの男が「おとといは6%! きのうは7%! 一日で1%増えてるんです!」と言った件だ。おれはずっとこれについて疑問に思い、《ほんとは7パーくらいのまんま、変わってねえんじゃねえのか》と考えてきたと再三書いてきました。
 
おわかりだろう。これはその考えがやはり当っていた証拠だ。「一日で1%増えた」とあいつは言ったけど、千人ばかりを調べた数なら1パーぐらいの誤差はあって当たり前。
 
つまり月曜に6%。火曜日に7%。
 
水曜に7。木曜に6。金・土・日は6・7・6。週平均6.5パー。
 
あの時ほんとはそんな具合であった見込みが高いということになる。何があした9パー、あさってに10で世界が終わるだ。トカゲ彗星野郎が。
 
そしてもうひとつ、その数字の下にあるもの。7月の検査数が週に28784件で、11月は42112件となっているのがわかりますね。
 
7で割ったら四千ちょいに六千ちょい。この時東京でそれだけの数を日に検査してたということ。
 
で、「今日は260人」「今日は390人」と言ってたということになり、確かにその頃ニュースが言った東京の感染者数はそのくらいだったと思うが、検査数が〈千人前後〉のままなら65人であり、4月1日と変わらないのだ。
 
おれの考えはやはり当たっていた。あの日のすぐ後1200、1500と検査する数を増やしていき、二千人を検査して、
「今日は130人。感染拡大!」
三千人を検査して、
「今日は195人。感染爆発!」
とやっていた。そして四千を検査して「260」と言う態勢を10月までやっていたが、11月に五千、六千と上げたのだ。
 
それをやるから増えてないのに「325」「390」と言うことになる。最初からすべてイカサマで、拡大など起きてなかった――これはその絶対の証拠となるものだ。
 
それがわかりますね。そんなものが毎週新聞に刷られ配達されながら、見る人間がいないため誰にも気づかれないできたのだ。で、次に8月のところを見てもらいたい。
 
東京の陽性率が3.5%となっている。これは患者の一時増加で「第二波だ」と言ってた頃だが、あれは感染の拡大で起きたものとされている。
 
が、割合で減ってたんじゃん。おれが思うに素人考えだけど陽気のせいじゃないかな。
 
カンカン照りの陽射しによってウイルスが日光消毒されるため、屋外での伝染が起こりにくくなっていたのだ。実際には拡大どころか半減していた。これも誰にもどんなごまかしも言い逃れもさせないぞ。あれはおれの考え通り〈クーラー病〉。熱帯夜で冷房ガンガンにかけながらハダカで寝たような者達が風邪を発症させたのが多く出ただけと見るのが妥当なのである。
 
でもって歳末に10%。これは増えてもいたようで、おれがこの頃「ほんとは減ってるんじゃないのか」と考えたのは間違いとわかる。それは認めよう。
 
が、せいぜいが五割り増しだ。それがなんであのような大爆発に聞こえたかと言えば、歳末の検査数が週に57317。一日8200人を検査していた計算となる。
 
ひと月前には六千だったのに。日に百人かそこらずつ、検査数を増やしてたのが明白じゃんか。それをやったらそりゃあ毎日過去最大を更新するさ。「今日は250」と言っていたのがいきなり「400」になり、そして「800」と言うことになるさ。
 
が、わかりますね。志村けんが死んだ頃のまま千人前後を検査する態勢を続けていたらこの時ニュースが言う数字は、
「今日は東京で100人」
だったわけである。その8倍を検査するから「今日は820人」となってたに過ぎないのだ。
 
数字は決して嘘をつかない。だから必ずそうとわかるし、ごく簡単な算数でしょう。小学三年くらいのレベルだ。そして、
 
画像:21年1月のデータ
 
次の21年1月。これは毎週分を見せるが、こうだ。最初の週が東京で14.3%となっている。
 
この時感染はさらに拡大はしていたけれどせいぜいが倍。週に58974、日に九千もの都民を検査することで「1300人」とか言ってたわけだが、なぜか1月7日にテレビは「今日は2447」と言った。
 
作品名:端数報告7 作家名:島田信之