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端数報告7

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見逃すな、これが最後のチャンスだ


 
てわけで2020年の末、「年明け7日に2度目の緊急事態宣言が出る」とテレビが言ったのだけど、これも皆さん憶えてますよね。聞いた瞬間におれはこれも「なんだ?」と思い、例によって「イカサマだな」と考えることになっている。
 
今回はそんなお話である。おれは聞いてまず最初に、
 
 
 
   「【7日に出す】って一体なんだよ。緊急事態なんだったら
    今日の日付で出しゃいいじゃねえか。緊急事態宣言ていうの、
   [10日後に出しますヨ]と予告してから出すもんなのか?」
 
 
 
と思ったが皆さんどうです。この時にそんな疑問を感じた方はございませんか。
 
いないのかな。おれだけなのかな。《今は緊急事態じゃないが、10日後に緊急事態となるのがわかっている宣言》なのか。しかしそんなもの発表すれば、事実上は今日の日付で宣言を出すのと同じじゃないのか?
 
と思ったが隣の部屋からの壁越しのニュースを聞いてる限りでは、マスコミや野党議員からそれに対して「なぜ今日でなく10日後なのか」という問いかけはないようだった。ちょっとテレビをつけてみると報道陣が首相を囲んで、
 
「総理! 7日に緊急事態宣言を出すというのは、もう決定なのでしょうか!」
「変更はないのですね?」
 
と質問をぶつけている。首相はこれに、
 
「これは完全な決定事項で、変更はありません。そしてひと月で解除します」
 
なんて応える。なんと解除の予定までもう立てられているらしい。
 
解除の予定までついている緊急事態宣言てなんだ? そんなの緊急事態じゃなかろう。としかおれには思えなかったが、テレビはその次の日も、
 
「総理。きのうの発表ですが、1月7日に緊急事態宣言を出すというのはやはり決定なのでしょうか。変更はないのでしょうか」
「決定であり、変更はありません。そしてひと月で解除します」
 
なんてニュースを流すのであった。そしてその次の日も、
 
「総理。1月7日に緊急事態宣言を出すというのは、もう本当に決まったことなのでしょうか。変更は決してないのでしょうか」
「決定であり、変更はありません。そしてひと月で解除します」
 
というニュースを流す。論点はただこれだけに絞られていてスタジオでも、
「どうなのでしょう○○さん。1月7日に緊急事態宣言を出すというのは、やはり完全な決定であって変更はないと見ていいのでしょうか」
と言ってコメンテーターが、
「そうですね。これは決定で変更はないと考えていいと思います」
と返している。[なぜ1月7日なのか][今はまだ緊急事態でないということなのか]といった問いを発する者はなく、[1月7日にその宣言を出すことで何がどう変わるのか]といった議論に話が向かうこともなく、[6日に変更すべき]とか[8日に変更すべき]とかいったことを言う者もない。
 
《1月7日で決定なのか》だけが問題にされるのだが、なぜそれだけを問題にするのか。
 
おれはまったくわからなかったが、皆さんの中にこの点を疑問に思った方いませんか。おれの頭が悪いだけで、皆さんにはわかってましたか。それを出すのが予告の日でなく1月7日でなければならない理由。10日後に宣言を出すと宣言したら今日に宣言しているのと同じなのではないとしたら、なぜ同じでないかの理由。
 
おれと違ってあなたの頭はとてもいいので、この時それを理解していてたとえ人に訊かれてもちゃんと説明できたのでしょうか。そのうえで、おれに向かって「お前そんなこともわからなかったのかよバーカ」と言うことができたのでしょうか。
 
それでしたらこれまでのおれの話も「頭のおかしなやつがイカレたことを書いている」と思って読んできたのでしょうし、この先を別に読まなくていいんですが、そうでないなら言わせてもらうとこの時おれが考えたのは、
 
 
 
   「狂言だな」
 
 
 
ということである。なんだか知らんがこのままいくと、社会ではなく自分の財布が緊急事態になるんじゃないのか。やっちゃいけないルーレットに遣っちゃいけないお金をガンガンつぎ込んだために、もう何もかも失って家を持ってかれるようなとこまで来ていて既に緊急事態なのに、それを認めず「1月7日までは大丈夫」とか言ってる。
 
そういう緊急事態宣言じゃねえのか。「あと10日だけ勝負できる。もう家なんか俺には要らない。7日までに1億の当たりが出ればいいんだあっ」という、〈古代進〉がそんなとこまで来ちゃってるのじゃないのかしらん。
 
とおれは考えた。で、マスコミも首相も東京都知事にしても、事情は似たようなもんであるためこの情報をなんかのフラグが立ったかのように受け取っているのじゃないか。
 
《ここで勝負をかければ俺が卓のチップを総獲りにできるのだ》と。そういう勘違いをするから「それは決定なのですね? 変更はないのですね?」と詰め寄り、応える方も「そうだ」と言うからみんながみんなこれに群がることになる。
 
画像:Don’t Miss,Last Chance! アフェリエイト:ウォンテッド
 
というわけだ。このコピーを変なふうに受け取る人間はバカなのだけど、心に余裕のない者はこんな文句を変なふうに勝手に受け取りすぐ飛びつくものであろう。
 
だからやっぱり【10日後に宣言を出す】と予告するのは、今日に宣言を出しているのと同じなんだね。聞いた者は《既に緊急事態だ》と受け取る。《10日間は〈波〉が来ないけど、10日後に〈波〉が来るのでいま行動しなければいけない》という解釈をすることになり、《これは詐欺ではないのか》という疑問を持ってみることもない。
 
《ここで勝負をかければ俺が卓のチップを総獲りにできる》という欲に目がくらんだ人間は、他人にその考えを言わない。言っちゃったら自分がどこに賭けているかを教えることになるからだ。《無駄と知りつつ民を救う努力は全力でした》との体裁も作っておかなきゃならないので、その意味でも本当に考えてることは口に出せない。
 
〈古代進〉がそういう人間であるために飛びつく者らもみんなそうだということなんだろ。とおれの頭では思えるのだが、しかしやっぱりわからないなあ。こんなことして何がどうなると思ってるんだろ。それともこれで本当に、コロナに自我を持たせられて[人類抹殺のための戦争]を始めさせられると考えてるのか。
 
かもしれないけれどしかし……とおれが悩んでるうちその〈1月7日〉が来るわけなのだが、それについては次の稿で。
 
作品名:端数報告7 作家名:島田信之