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あすは我が身

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その5


彼女はラインを繋いでくれた。
滅多に電話にも出ない彼女なのでこちらから電話を掛けることはしなかったからだ。私はラインには疎いが、彼女はこういうことになるととても器用なんだなと思った。

彼女は何となく活き活きしていた。自分の得意とすることに意欲を持ち始めたようだった。株も自分で勉強したらしく、あのときの傷心した言葉を聴くことも無くなっていた。

しかも、「ねえ、これからは頭を使いましょうね」とまで私に言う。
私は彼女が男にうつつを抜かしたり、何事かあると誰かに相談しなきゃという気持ちが無くなっていることに非常に共感を覚えた。

私がスマホのことで分からないことがあるのを知ると、とても細かく教えてくれる。彼女は以前の彼女ではない。元々国立大の理系を卒業しているのだから賢い人なのだけど、多分何らかのきっかけで心が弱くなっていたに相違ない。
この調子で頑張れ!という気持ちだ。

前向きに生きる姿勢を持っている高齢者は年をとっても脳は活き活きしている。生きることを楽しんでいる者は素晴らしい。
意欲を持たなくなった者は無意識に認知症への道を選んでいるのだから。


 完


作品名:あすは我が身 作家名:笹峰霧子