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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 後編

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紫に暮れる空



退学することは、ついに郁たちには言えなかった。その日の放課後、事務所で最後の手続きをすませた恵麻は、郁や瑞に別れを告げずに行くことを後ろめたく思った。だけどこれ以上この学校にも彼らにも、迷惑をかけるわけにはいかないから…。それなのに。

「先生…」

校門の前に紫暮が立っていた。部活を抜けてきたのか、胴着姿の郁と瑞、伊吹を伴っている。

「郁ちゃん、ごめんね…」
「退学しちゃうって…先生に聞いて…」

うん、と泣きそうな郁に笑いかける。

「定時制の高校に行くことにした…。昼間はバイトしてお金貯めて、病院に通うの。郁ちゃんには、本当にたくさん助けてもらった。ありがとうね」

母と担任と話し合って決めたことだ。学校に迷惑がかかるし、生徒たちにも動揺が広がっていた。その話し合いの場には、紫暮も立ち会ってくれた。恵麻の意思を尊重し、思いを代弁し、母に繰り返し理解を求めてくれたのは紫暮だった。
担任とスクールカウンセラーが、転出先の学校や医療機関に、恵麻と母を繋いでくれた。当分は通院することになりそうだ。自分は瑞が言うように、心が壊れかけている。今ならそれが自分でもわかった。

母はまだ、自分を許してくれない。一生許さないし受け入れることはないだろう。その事実を、恵麻は否定してはいけないのだと思う。だからこそ自立したい。償いの為に、生きていく為に、目標を見つけたいのだ。

「時間を見つけて、弓も習いたい。いつか郁ちゃんみたいになりたいんだ。まっすぐに前を見て、弱い部分と向き合っていく姿、あたし忘れない。神末先輩があたしにも出来るって言ってくれたから」

伊吹は先日と同じに笑って頷いてくれた。あのときの言葉が、恵麻には本当に嬉しかったのだ。

「いつかどこかで一緒に弓を引ける日がくるのを、楽しみにしてる」
「はい」

伊吹からの言葉は、心に小さな希望の火が灯るようだった。