小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

紫に暮れる空 探偵奇談25 後編

INDEX|2ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

坂道の悪意



それは端から見れば暇つぶしだと思われていたかもしれない。実際恵麻はそのように振る舞っていた。だけど本当は、劣等感やコンプレックスとか存在意義とか、そういった汚く幼稚な感情に振り回された、弱い自分の悪あがきだったのだと今はわかる。

恵麻はクラスの中で自分の地位を確立していたし、自分の振る舞いで周囲が思い通りになるのも知っていた。成績もそこそこよかったし、大勢の中心でいられることが心地よかった。

だから、転校してきた相良美捺(さがらみなつ)が、クラスのみんなの視線をさらったり、部活で活躍したり、定期考査でよい成績を残すことが気にくわなかった。

大人しく、どちらかといえば地味であった美捺だが、愛嬌があってすぐにクラスに溶け込んだ。バドミントン部で活躍し、溌剌とした彼女は教師にも好かれていた。

気に入らなかった。

わたしのほうがきれいだし。
わたしのほうが友だちも多いし。
わたしのほうが目立ってる。

わたしのほうが。わたしのほうが。

(あいつ、うざいなあ…)

髪の手入れは欠かさない、適度な運動と筋トレで、体形もキープしている。美容にはお金がかかるから、バイトをしながら勉強も欠かさずする。友達との遊びの時間も、彼氏との時間も、生活の中からちゃんと捻出している。努力しているのに。

本当に、目障り。

始めは、話しかけられても冷たくあしらうことだった。それがやがて無視となり、なんとなくクラスメイト達も面白がりはじめた。

あいつうざくない?それだけの、無責任で曖昧で根拠のない理由で。

美捺には、何の非もなかった。しかし、妬みや嫉みは恨みを買うし、恨みはなくとも悪意はいとも簡単に伝播していった。恵麻がやるならわたしもやろうかな、という不健全で誤っている人間関係や友情が、いじめに拍車をかけた。

悪意は、どんどんエスカレートする。坂道を転がり落ちるがごとくスピードを増し、止めようと思ったときにはもう止められない。

クラス中からの無視。
私物の破壊。
罵詈雑言。

幼稚な悪意による攻撃は、枚挙にいとまがなかった。