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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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猫のゆりかご



日曜日、午前中に弓道場に顔を出すと、自主練習に来ていた部員達が稽古に励んでいた。紫暮も邪魔にならないよう弓を引かせてもらうことにする。指導も稽古の一環だが、自身の射に向き合う時間も必要だった。主将の神末伊吹(こうずえいぶき)も同様らしい。部活中は指導に追われているので、自主練習の時間には必ず弓を引いていた。その合間に勉強もしている。受験生は忙しい。伊吹は進路が明確になったようで、勉強に取り組む姿勢にも迷いがなかった。そしてその背中を追いかけるようにして、瑞も稽古に励んでいた。

「お先に失礼しまーす」

正午が近くなり、部員らは挨拶をして帰って行く。伊吹も午後は友人らと文化展に行くのだと言う。

「うちのクラスに、写真部のすごいやつがいるんです。カメラ雑誌に載っちゃうみたいな」
「へえ、すごいな」
「将来はカメラで食べていくって。すごいですよね」

伊吹の言葉に紫暮も感心する。自分のすすむ道を迷いなくつきすすめる情熱は素直にすごいと思う。

「瑞は行かないのか?文化展」

伊吹に問われ、まだ胴着姿の弟は頷いた。

「俺ちょっと用事あるから。またね先輩」

伊吹らが行ってしまい二人になったところで、紫暮は瑞に尋ねてみた。

「ゆうべの靴バンバンは、一体何だったんだ?」

瑞はむすっと口を尖らせている。あの奇行の真意を知りたかった。
瑞には、紫暮には見えないものが見え、感じられ、意思を交わすことが出来るのだ。もしかして、それに関係あることかもしれない。

「なんか、変な感じがしたから」
「変な感じ?」

瑞は言葉を探す様に視線を虚空に彷徨わせて続けた。