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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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日没に囁く



月曜日、夕刻。紫暮は学校での実習を終えて、再び文化展の会場を訪れていた。初日までとはいかないものの、ちらほらと市民の姿が見える。二階の絵画展示ホールに足を運び、初日と同じく監視にあたる。

(ああ、だめだ)

あの絵の中の女が、じっと視線を寄越しているのを感じる。紫暮は気づいていた。この会場の中で、この絵に意識を向けているのは自分だけだ。なぜか他の入場者は、あの絵の前で一向に立ち止まらないのだ。確かに不気味な絵なのだが、それ以上に他の作品のインパクトが大きいのだ。古ぼけた絵など、目もくれない人たち。自分だけが、意識し、魅入られたように頭の片隅から離れないのだ。紫暮はそれを自覚し、まずいとも感じている。しかし、どうすることも出来ないのだった。

西日が傾き始め、オレンジの光が廊下の絨毯の上に落ちているのが目に入る。いつの間にか一人だった。まるであの絵と二人きりになることを仕組まれているような。そんな確信が紫暮にはあった。

静かにその絵に歩み寄る。昨日と同じに、女性はこちらを見ていた。その口元のかさつきは、近づいてみれば劣化したキャンバスの表面の汚れなのだが、いやにリアルである。

(何か変だな…)

違和感に目をこらす。昨日見たときとは、何かが違う。
しばらく絵を見つめたのち、紫暮は気づく。

窓だ。

女性の背後にある灰色の窓。少しだけ開いている。そこからくすんだオレンジの光が細く室内に入り込んでいる描写。

(昨日と、変わっている)

それはちょうど、いま会場に差す明るい西日のように。紫暮は顔を近づけてまじまじと観察する。昨日今日描き足したような絵の具の具合ではない。そんなばかなことがあるものか。一夜にして絵が変化したというのか?