小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夜が訪れるとき 探偵奇談24

INDEX|1ページ/26ページ|

次のページ
 

くすんだ朝の色



梅雨入りするにはまだ早い五月の終わりのこと。昼休みの賑やかな喧騒が響き渡る校内で、須丸紫暮(すまるしぐれ)は、社会化準備室で午後の授業の準備をしていた。教育実習も半ばに差し掛かり、ようやく授業のリズムがつかめてきたところだ。

「失礼しま~す。須丸せんせー、いますかあ?」

入って来たのは、紫暮が日本史の授業を受け持つ二年生女子だった。弟と同じクラスの成瀬だ。昼休みの社会化準備室に何の用だろうか。

「先生、これ美術展のお知らせ」
「うん?」

A4サイズのチラシを受け取る。

「週末から一週間、市の芸術文化展示会があるんだけど、うちの学校からは美術部と書道部、あと華道部と写真部が出展してるんです。うちらの活動を知ってもらう機会だから、いろんな先生や保護者に配布中なの。よかったら見に来てね」
「ああ。俺、開催中は夜の部の監視役で行くんだ」

作品に触れないように監視したり、展示物や会場内で問題があれば対応する。主催が市教育委員会なものだから、教師や実習生も駆り出されることになっているのだ。

「あ、そーなの?じゃあゆっくり見られるね。よろしくお願いします。うちらの絵もちゃんと見てね」

成瀬はそう言ってヒラヒラ手を振って出ていった。腕にはまだチラシを抱えているから、このあとも教師や生徒のもとに配布に向かうのだろう。

この学校は運動部、文化部、ともに盛んに活動している。文武両道を掲げ、成績が悪ければ公式戦やコンクールには出さないという厳しいきまりが存在する。そのため生徒たちは部活動と同じくらい、勉強にも時間を割いているのだった。
展示会やコンクールは、文化部にとっては運動部の大会と同じく成果を披露する大切な場なのだ。監視員という役目であるが、生徒の作品をじっくり眺めてみようかという気持ちになってくる。一生懸命に努力しているのは、運動部も文化部も同じ。展示会は文化部にとっての表現の場なのだ。

(文化部の活動を知るいい機会だ)

紫暮は弓道部の指導をつとめているので、文化部の活動に参加することがない。その活動の一端に触れることを楽しみに、受け取ったチラシを机の引き出しに仕舞った。






.