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叶わぬ夢

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その5


私が大学を卒業すると、彼は私の家に毎日のように遊びに来ていた。
というのは彼はそれまで勤めていた職場をやめて次の職場に移るべく無為の日々を送っていたからだ。

意味もなく付き合っていてもと結婚の圧力をかけて来たのは彼の母親だった。もう年も年だからという思いだったのだろう。私の母も納得し私達はその年の秋に籍を入れた。式は翌年の春に挙げることとなった。
何もかも親同士が決めたことだった。

式を延期したのは、私の家の敷地に新居を建てることになったからだ。
こじんまりした二階建ての家が出来上がった。一階には台所と茶の間の他に廊下を挟んで広い応接間もあり、その部屋から階段を上がって八畳の畳の部屋があった。

翌年に式を挙げ同居したとき新居は木の香りがぷんぷんしていた。
順調と言えば順調だが、よく喧嘩をしていた。職場を変わった夫が普通の健康な精神状態でなかったからだ。多分夫もそのような状態で他家へ婿入りして、我儘な私との生活は決して幸せなものではなかったのだろう。

作品名:叶わぬ夢 作家名:笹峰霧子