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鬱蒼

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時は現代、ところは東南アジアの某国。
 ひとりの某国人の青年が、休日に、大勢の人たちでにぎわう街に出かけた。そして人ごみに押し出されるように、静かな古物商の店に立ち寄った。何と無く古い本を手に取って、何とか判読できる一文に目を引かれた。
 いわゆる中世に当たるのであろう。この国の某地域の某所にニホン人が住む小さな集落があったが、伝染病のために滅んだ。たくさんの宝飾品を抱えたまま滅んだ。そしてわけあって、そのままになっている……と。
(こんな話は聞いたことも無いが、本当なんだろうか? 知ってる人は知ってるんだろうか? もしかして、一獲千金のチャンスってことは無いんだろうか)
 青年は、大したことの無い金額だったその古い本を買い、自宅に戻って一度調べてみることにした。
 結果、インターネットで注文した食べ物を頬張りながらインターネットで検索に没頭して判ったのは、だいたい次のようなことだった。

 ――今から四百年以上も前。北東アジアの国ニホンで、大きな内戦があった。最終的にニホンは統一されたが、敗れた側のサムライの数百人が、主君を失ったために、あるいは戦い以外に食べていく術を知らないために、はるばる東南アジアのこの国にまでやってきた。彼らはたちまち傭兵団として頭角を現し、その権勢を高め、やがて政治に食い込むようになった。ついに王の後継者争いにまで関わったが、ニホン人勢力が支持する候補者が敗れ、ニホン人勢力も全て王都から追い出された。国内外のあちこちへ散っていった――。

 しかし、その古い本に書かれていることは、ヒットできない情報だった。
 「某地域の某所」というのは、番地が書かれているわけは無かったが、書かれている地名を照らし合わせて一定のところまで絞り込めた。
 青年は、この探索に、余暇と金銭をしばらく捧げることに決めた。
 青年は「某地域の某所」――沿岸部でない、奥まった一地方――を車で訪れ、聞き込みを行なった。
 「知らない」「聞いたことも無い」という返事ばかりが続いた。
 しかし、青年は粘り強かった。

       *       *       *

 半年後、ついにそれらしき場所が特定された。
 そこは、地元の人たちから、「その付近に行くと死ぬ」と忌避されているエリアだった。何でも、「ニホン人たちの幽霊に祟られる」とのことだった。
 しかし青年は、諦めなかった。
 聞けば、「その付近には陽炎のようなゆらめきがたくさんうごめいており」、「行くと脳卒中や心臓発作で死ぬ」という。
(これは、そのエリアで有毒ガスが噴き出すようになってるって感じのことじゃないのかな)
 青年は、一獲千金に賭けて思い切った。思い切って貯金の三分の一を支払い、ドローン業者と専門業者に頼ってそのエリアの調査をさせた。
 結果、神秘的なゆらめきを、映像でもかすかに確認することができた。
 有毒ガスは無いのが判った。そこの植生がそこ以外のそれと違いが無いのも判った。
 そして、草木に埋もれながらも、いくつかの住居跡があるのも見られた。
 そこに、たくさんの宝飾品が遺されている可能性がある。

 青年は次に、減った貯金の大半を支払い、名の知られた除霊師を呼び寄せた。
 そして先頭に立ってもらって、除霊師と青年は旧ニホン人集落に近づいた。
(なるほど、確かにユラユラがあって、動き回ってる! たくさんあるがいくつあるんだ!?)
 青年が思うや、除霊師がうずくまった。
「ううっ! く、苦し……」
「除霊師さん!?}
「これは無理です、早く逃げなさ……」
「でも」
 青年は、除霊師の様子を伺いながら後ずさりし、振り返って走った。
(こ、これは大変なことになってしまった)
 鼓動が速いのが判る。青年は悔やんだ。悩んだ。
(あっさりと死人を出してしまった……警察にも来てもらわないといけないが、僕はどの程度の責任を負うんだろうか? 眠れる財宝の独り占めは、もうだめなのだろうか? 貯金も大部分を使ってしまったのに……)
 青年は足を止めた。
「……このまま逃げるわけにはいかない」
 青年は、向きを変えた。そして、ひとつの賭けに出ることにした。
 インターネットで情報の森をさまよった時にたまたま得たひとつの可能性に賭けて、立ち向かう姿勢を取った。
 青年は慎重に進んでいく。除霊師が倒れている場所へと戻っていく。
(ユラユラたちは……来る!?)
 果たして突然の息苦しさに襲われ、青年はうずくまった。
「ううっ、だめなのかっ……かなり信頼できるソースによれば」
 そして前にくず折れながらうめいた。
「ニホンの伝統文化では、体の前で腕をチョップの形にして進めば道を開けてくれる……と」

(了)
作品名:鬱蒼 作家名:Dewdrop