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人生の織物

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その8


母と夫との掛け持ちの世話は大変なようでも、母がいることで私の心の支えになっていた。母は頭はしっかりしていたし何事かあるとお金をくれた。

一方で夫は、温和な印象のある人だったので私以外は誰一人その狂暴さを知る人はいなかった。傍にいる母や遠くに住む娘たちさえも知らずに済んだ。私にとっては狂暴な夫との同居は逃げてしまいたかったが、病人を残して家を出る決心はつかなかった。

あのとき誰かが手を差し伸べて支えてくれたらどんなに心強かっただろう。夫側の親戚はそれ以来我家を訪ねることはなく、義兄夫婦や義叔母とも疎遠になり、夫が亡くなるまでその状態は続いた。

娘達はそのころ、結婚したり仕事で忙殺されたりしていたので、極たまにしか帰郷することはなかった。
次女に孫ができてから私は孫の世話に県外に出かけて滞在することが多くなり、そちらも多忙で大変ではあったが、孫と過ごす日々があったからこそ、自宅での恐怖の時間が耐えられたのだと思う。

孫の居る家と自宅を掛け持ちで暮らしたのは足掛け12年間だったが、孫が中学生になる前辺りから私が滞在することも左程うれしくもなさそうな素振りを見せたのでそれ以来孫の家には行かなかったが、年に二、三回来てくれたので孫の成長を身近に見るのはとてもうれしかった。

夫は定年を迎える一年前に倒れて、私の恐怖の存在として十数年生存したが、夫自身が自覚していた以上に長生きできた。夫の葬儀のときは私の小中と高校の同級生が大半を占め、その他は義兄宅の親族が来てくれたのでとてもありがたかった。

独りの生活が始まったのはそれからで、私は次第に強くなって行った。葬儀のときに帰省していた子供がパソコンという珍しいものの手解きをしてくれたのはそのときだった。


作品名:人生の織物 作家名:笹峰霧子