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黒い幽霊

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これは、オレが昔、夜間施設警備の仕事をしてた時の話だ。

 オレがある晩、毎度のようにブツブツひとりごとを言いながら見回りをしてると、どうもオレとは別の声がしたような気がして、オレは黙ったんだね。
 そうすると、やっぱり聞こえる。かすかに聞こえる。オレ以外の声が。オレ以外には誰もいないはずなのに、だよ。そしてじっと耳を澄ますと、もはやはっきりと「……恨めしい」って聞こえたんだよ! オレの背後から!
 これにはオレも、びっくーってしたね! いやいやみんなビビるでしょあれは!(笑)
 で、オレも、まあ怖いんだけど何だろう、とにかく振り返ると、何かいるのよ! 明らかに人間じゃない感じのヤツが。何か半透明なヤツがさ。
 これはもう、ホント血の気が引いたよ。初めて見たからねあーゆーの……で? それでオレが何か固まってると、何と向こうがまたしゃべってきたんだわ。
 「……おまえも夜勤か」。「も」って何? みたいな(笑)。最初はよく分からんかったけど、でもコミュニケーションができそうっていうか、夜勤に理解ありそうっていうか?(笑) オレも微妙にラクになって。
 おっかなびっくりしながらも、そうだけど、アナタも夜勤なの? みたいに聞くと、「……そうだ」って答えがきて。で更に、「……おまえも血色が悪いな」って言ってきて。
 さっき言ったとおり、オレは血の気が引いてたわけだけど、それが無くてもまあ体調悪かったんだよね。不摂生と夜勤でボロボロだった(笑)。
 だから、ハイ、悪いです、みたいに答えたんだけど、何かだんだん、共感が形成されつつある気はしてた。
 そしたらだよ、何と次は、「おまえも待遇が悪いのか」って言ってきて。オレのひとりごと聞かれてたのかよ! っていうかオマエ何なんだよ! っていう(笑)。
 それでオレが、ハイ、毎日大変です、みたいなことを言ったと思うけど、そしたら向こうが「……俺もだ……もう疲れた」って言い出して。それからも多少愚痴られたんだけど、どうも幽霊の世界でもブラック労働があるらしいんだな。で、ソイツはこう言い出した。「……疲れ切ったので、神主を呼んでほしい」
 俺も、しんみりと気の毒になってね。俺たちよく似てたからさ。俺も助けになれるなら助けてやりたい気がして、それで神主を呼んでどうするんですか、みたいなことを一応確認したら、
「……神主が払いたまえ~、ってやってくれると、会社に未払い給与を払わせることができるんだよ」
 で俺が、労基かよ! ってツッコんだら、アイツ満足そうな顔で消えていったね(笑)。ホント何だったんだろうねあれは……(笑)。

(了)
作品名:黒い幽霊 作家名:Dewdrop