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愛情

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その4



中年になって私の生家は道路が通ることになり没収されることになった。国から降りた資金で新しい家を探し、私の家族は認知症の叔母も連れて引っ越しをした。
町に転居した時点で、高校の同級生と集まったり、彼女が友達と二人連れで遊びに来るようになった。彼女はとても優しい雰囲気で対応する人なので私は彼女と会えるととてもうれしかったが、彼女にとって私は特別親しい友達ではないらしく、高校時代のグループの仲間の他にも市内在住の友達が色々いたようだ。
私は積極的に彼女に親しみを持って接していたので、次第に私に対して好意を持ってくれるようになった。

彼女は若いときから目が悪かったらしいが、高校生のとき私はそのことを知らなかった。付き合っていく内に彼女の視力が次第に悪くなっているのが感じられた。部屋から明るい外に出ると真っ白に見えると言い、暫く動けなかった時があった。亦、葬儀に同席したとき、黒い喪服姿が並ぶ室内では彼女の視界は真っ暗に見えたようで、座っている人の膝の上に座ろうとしたこともある。

その頃でも彼女の容貌は美しく、一緒に撮った写真では際立って可愛らしく写っていた。彼女はいつも、次第に視界が狭くなっていつかは見えなくなるときがくると言っていた。


作品名:愛情 作家名:笹峰霧子