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愛情

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その2



私は日常的には普通の精神状態で一日を送っているが、何かをしているとき突如ふわっと幸せな感覚が胸の中を流れることがある。
これと同じ感情が高校一年のときにも湧いた。学校から帰って庭の牡丹桜の赤い蕾を見上げて沸き起こった感情だ。そのとき、なんて素晴らしいんだろうと胸がいっぱいになって暫く眺めていた、その有様が今でも脳裏に浮かぶ。
翌年にも同じことが起きるかと思ったがその年以来なにも感じなくなっていた。

中年になってからもたまにそのような幸せな感覚が胸の中に湧いてきたことがあった。その感情は何がどうしたということではなく、何もない所から湧き上がる瞬時の感覚だ。それはいっとき胸の中にとどまり消える。多分その時しあわせホルモンが出ているのではないかと思っている。


先日ご機嫌伺いに友人に電話をかけた。
彼女は、いま二階で涙を流して泣いていたので良いタイミングで電話をもらった、と大層喜んだ。アルバムを整理していて子供が小さい時の写真を見ていたら哀しくなって、大声を出して泣いていたのよと言った。亡くなったとかいうのなら意味もわかるが、現在娘達はしっかり自立していて、毎日のように電話を呉れる者もいる。

なんで泣かないかんの?と聞いたら、自分でもわからないがとにかく哀しくなって涙がぽろぽろ出たという。
人間の感情とは意外な機能が働いて感情も様々なんだなと思った。


作品名:愛情 作家名:笹峰霧子