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空墓所から

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24.わかめ



 突然ですが、皆さんは、わかめを召し上がるでしょうか。

 とっても美味しいので、私は非常に好んでよく食べています。かみ締めると、どことなく遠い磯の風味が口の中に広がっていくような気すらしてきます。もっとも、三陸のに限るとか、乾燥のはいかんとか、そういったこだわりは一切ないので、口内に広がっていく風味もただの幻想でしかないとは思うのですが。

 とはいえ、美味しくて磯の香りが漂ってくる、それだけではありません。わかめってのは、もっとすごいやつなんです。やればできるやつなんです。もっと評価されるべきやつなんです。今回のこのセッションでは、あまり注目されていないであろうわかめのすごさについて、お話をしていこうと思う所存でございます。

 まず、わかめの最大の長所ですが、ほとんどの料理に合うという点、これに尽きるのではないでしょうか。これは、なかなかできることではありません。もちろん、卵や肉、魚、多くの野菜のようなエース級の食材は当たり前のように自身の役割を合わせてきますが、なかなかどうしてわかめもいい働きをしているのです。

 例えば、みそ汁。これは彼の主戦場と言っていい料理ですが、みそ汁が主戦場ということは、とりもなおさず汁物に強いということの証明にもなるわけです。すなわち、ラーメン、そば、うどんという、恐らく日本人が好むであろう麺類TOP3の全てにお供として登場することができるという、素晴らしい動きをわかめはわれわれに魅せてくれているのです。

 ちなみにスープにしたり、同じ魚介仲間のツナとあえることで、パスタともコラボをすることも可能です。また、忘れてはいけないのが、われわれ日本人にとって間違いなく必要不可欠な存在であるお米。そう、ご飯にも、混ぜ込むという行為によって、わかめごはんという素晴らしいメニューを形成することができるということです。小さい頃、みなさんも学校給食などで味わったことがあるのではないでしょうか、あの懐かしい味。おにぎりにしてもいいですし、糖尿病の予防にもなると昨今注目が集まっているわかめごはん、皆さんも是非、あの懐かしい味を今一度、お試しくださればと思います。

 ここまで説明すれば、もうわかめは、日本人が愛している主食のほとんどを補佐している存在である、ということがお分かりになると思います。まさに食のオールラウンダーとでもいうべき活躍っぷりではないでしょうか。
 ところが、まだまだあるのです。主食のお供としての活躍だけでなく、副菜としての仕事もちゃんと彼らはこなしているのです。

 代表的なところでいうと、酢の物がありますね。和え物にしてもおいしいです。煮浸しなんていう調理方法もありますし、炒め物や煮物にも用いられることがあります。海鮮サラダみたいな場所でも最近出番が増えてきているようでございます。ここまでご説明させていただいたとおり、副菜、おかずとしてもわかめのレパートリーは多岐にわたっているのです。

 さて、ここまでわかめの素晴らしさについて簡単にですが、ご説明させていただきました。この次のセクションでは、やや心苦しくはありますが、わかめの短所について少し説明をさせていただければと考えております。われわれはお客さまに、あくまでフェアに製品を選択していただきたいと考えております。そのため、他の食材と比べた際の至らない点についても、私どもは皆さんに全て開示していくことで、公平、公正な判断を仰いでいただこうと考えておるものでございます。

 わかめの最も大きな欠点を挙げるとすれば、やはり、肉や魚と比べるとやや物足りない存在だという点でしょうか。例えるなら、肉や魚が、一発を放つ可能性が高い3番や4番を打つバッターだとしたら、わかめは、ひいき目に見てもテクニックや守備で魅せる俊足巧打や堅守が売りの選手でしょう。そういう意味では、子どもからの人気も決して高くはないかもしれません。
 ですがその欠点も、年を取ったものやダイエットに悩む女性にとっては福音です。肉や魚がそろそろ重くなってきたおじさんたちの胃に優しく染み渡り、美容に興味を持つ女性の腸を低カロリーで整えるなどといった役割でサポートしていくことができるのです。

 また、わかめにはもう一つ欠点がございます。これは、主に男性が陥りがちなのですが、おいしいからといって大量に食べていると、薄毛を気にしているんじゃないかと周囲に思われてしまうことです。そんなふうに思われてるんじゃないかと、ふと、一度でも思ってしまったら、それ以降、おちおちわかめを人前で食べることが難しくなってしまいます。

 そんなことになるのなら、私はいっそわかめを食べるよりわかめ酒をたしなみたいところです。しかし、そんなことを許可してくれる女性はなかなか目の前に現れることはありません。


 以上の告白をもって、このセッションを終了したいと思います。

 ご清聴、ありがとうございました。


作品名:空墓所から 作家名:六色塔