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「猫」

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《御免(ごめん)ね~》
《彼(あ)の子、一度言い出したら聞かないから~》

「知ってる」

途端(とたん)、豪快に笑い出す
小母(おば)さんの声に少女は脊髄反射、携帯電話を耳元から遠ざける

《然(そ)うよね~》
《嫌でも彼(あ)の子の性格、知ってるわよね~》

《本当、困ったものよね~》
と、溜息交じり小母(おば)さんが付け足す

遣(や)る時は遣(や)る
遣(や)らない時は遣(や)らない少年の性格は厄介(やっかい)だ

《でもね~》

如何(どう)でも好いが
母親といい、此(こ)の小母(おば)さんといい
何故に語尾に「~」が付くのか

全然、可愛くもない間延び具合に若干(じゃっかん)、苛(いら)つく
愈愈(いよいよ)、少女は通話を終わらせる切っ掛けを窺(うかが)い始める

《彼(あ)の子、本当に貴女(あなた)の事が好きなのよ~》

「知ってる」

迂闊(うかつ)にも口を滑らせた
少女が慌てて否定するも時 既(すで)に遅し

年甲斐(としがい)もなく
黄色い声を上げる小母(おば)さんの反応に再度、携帯電話を遠ざける

《ね!、ね!》
《だったら一層(いっそ)の事、結》

皆(みな)まで言わせるか!
少女は小母(おば)さんに負けじと声を張る

「宅配が来た!」
「またね!、小母(おば)さん!!」

《ええ?!》

何が一層(いっそ)の事だ
此方(こちら)の気持ち等、お構いなしの提案じゃないか

抑(そもそも)、我が子の携帯電話へ掛けてきた
小母(おば)さんに少年が今の現状を説明した結果
「代われ」と、促(うなが)されて電話に出たのが間違いだった

延延(えんえん)、近況報告という世間話に付き合わされた
挙句(あげく)の果てが少年との「結、」とは洒落(しゃれ)にもならない

其(そ)れでも母親と自分との母子関係について
彼是(あれこれ)、口を出さない小母(おば)さんには感謝している

御陰(おかげ)で母親も小母(おば)さんも嫌いにならないで済む

其(そ)れにしても
お喋(しゃべ)りが止まらない小母(おば)さんの傍(かたわ)らに居れば
必然、口数が減るのにも頷(うなず)ける

然(そ)うして自分の言葉を馬鹿正直に受け止めて玄関先に向かう
少年を引き留めて少女は携帯電話を突き返す

「御免(ごめん)、切った」

一応、謝罪するが罪悪感はない

少年も同様なのか
無言で受け取る携帯電話の電源を切った

結局、少年は宿泊先の宿(ホテル)から荷物を引き揚げ
当然のように少女の住む、集合住宅(アパート)の一間(ワンルーム)に転がり込む

意味が分からない
振られた相手に「同棲」だか「同居」だかするなんて本当、意味が分からない

自分も意味が分からない
振った相手に「同棲」だか「同居」だかするなんて本当、自分も意味が分からない

作品名:「猫」 作家名:七星瓢虫