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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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八人の住人

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9話 彼女の役目






おはようございます、五樹です。今回は、時子の叔母との、電話の話をしましょう。

時子の叔母は、時子にとても優しくしてくれて、幼い頃から不遇にあった時子を、今でも気にしてくれている人です。

時子は、辛くなると叔母に電話を掛け、今よりもっと以前には、泣きながら話をしていた事が多かったと思います。

最近の時子は大分回復をしていて、電話の時に泣いている事もあまり無くなりました。


ところで、時子の叔母とは、僕達別人格も関わりを持っています。もちろん、僕達は全員同一人物なんですから、当たり前ではありますが。


時子は時折酷く落ち込んで、昔母親にされていたように、自分を厳しく責める事があります。レコードの傷を、針が繰り返しなぞり続けるように。

その癖が暴走して、これ以上追い詰めようがない程に彼女が窮地に追いやられた時、僕は時子の叔母に電話を掛ける事があります。

「もしもし?」

電話を取った叔母の声は優しい。

「はい、もしもし」

僕がそう言うと、いつも電話の向こうで、叔母が一瞬立ち止まるような気配を感じます。

「ああ、はいはい?」

叔母の「ああ」は、「ああ、今は五樹さんなのね」の、「ああ」だと思います。

僕と時子は、喋り方も、声の高さも違います。なので、何度か電話をすれば、すぐに分かるようになるようです。

「今、電話してても大丈夫ですか?時子の事で相談があるんですが…」

「大丈夫よ。でも、ちょっと待って。部屋を移るから…」

「ありがとうございます」

ここでは詳細な会話は出しませんが、僕はいつも、時子がどうしたら窮地から脱出出来るかについて、時子の叔母に意見を乞う事が多かったと思います。


3日程前も、僕は時子の叔母と電話をしていました。

でも、少し話が途切れたと思ったら、僕は突然眠くなり、「桔梗」が目覚めようとしているのを感じたのです。

「六人の住人」でも語りましたが、僕は別人格全員の挙動を知る事が出来、彼らをなんとか制圧しておきたいと、以前は思っていました。

でも、他の人格が数回ずつ現れた時にも、悪い事は何も起きなかった。だから、桔梗が出てこようとしても、もう止めませんでした。

作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎