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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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7話 彰






今日は、僕達は非常に不安定でした。まず、朝から夜までを、簡単に追いましょう。

まず、朝起きた時から、時子の調子はとても悪く、夫が家を出る時にも頻りに寂しがっていました。

それで、昼過ぎになっても不安が治まらなかった時子を見ていて、表に出てきた桔梗が、睡眠導入剤を飲んでしまったのです。

桔梗にも考えがあり、「こんな状態でこの子を起こしておくよりは、早く寝かせた方が良い」と思ったようでした。

でも、服薬時刻が早過ぎたため、薬が上手く効かず、夕方あたりに、また時子が目覚めます。

時子は、自分がすでに睡眠導入剤を飲んだ後だと知る由もなく、起きた直後の習慣として、珈琲を飲んでしまいました。

その後、なんとなく不安定で、漠然と恐怖を抱えながら、時子は眠り、僕に交代します。

僕はなんとかして布団で目を閉じていて、数時間の仮眠をしました。これは、その後の話です。


夫が帰宅してからは、しばらく時子は目覚めていました。

でも、途中から時子はまた眠り、「五樹」、「桔梗」、「彰」、「悠」の順番で目覚めます。

僕は夫君と他愛のない無駄話をして、桔梗はイヤホンでモーツァルトのレクイエムを聴きながら、紅茶を飲みました。

桔梗は、僕が時子の心配をする度に、いつも「必要ない」と切り捨てます。今晩はこんな風に言いました。

“私達は確かにこの子を理解してあげられるけど、この子は正しい自己理解を持っていないから、いくら理解した事を話して聞かせても、平行線”

“それに、カウンセリングに通い続けられさえすれば、もう後は良くなるだけ。私達に対話が必要だとは、私は思わない”

言ってしまえばそれまで、といった感じがします。でも、桔梗の言う事は正しい。

何も僕達が手を出さなくとも、この子はもう回復し始めています。今晩、またそれが証明されました。

作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎