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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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カンチューハイを車内で飲む男

INDEX|178ページ/183ページ|

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悩みを聞いてほしかったが・・・



 連休最後の日曜日、同郷の友人で、心療内科を開業しているJ君とゴルフに行った。
J君は最近苦労が多いらしく、頭の禿げ具合も本格化している。
私も薄くなったと悲観していたが、彼と会ってすこし自信を取り戻した。

 J君は、ゴルフの調子も以前ほどの精彩がなかった。
疲れているのかと思ったら、そうではなくて、いつも使うドライバーとパターをどこかに置き忘れて、間に合わせのクラブを持ってきたと言っていた。頭の毛だけでなく、中身も薄くなったのだろうか。

 ゴルフはともかく、私は帰りの駅ビルで一杯飲むのを楽しみにしていた。
いつものことだが、心療内科の彼に日ごろの悩みを相談したかったのだ。

 私は無口だが、世の中は広い。
私より無口な人間もいる。それがJ君だ。
「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、私の友人にふさわしいのだろう。
彼は主に、うつ病や神経症などを診ているようだ。
J君は心療内科に進む前から、口数は少なかったが、今はもっと少ない。

 私はかねがね、
〈彼は無口すぎるのではないか〉と思っていた。
奥さんは心配しないのだろうか? 
患者さんは、〈あの先生、すこし変じゃないか?〉と思わないだろうか。
しかし私としては、よくしゃべる人より、無口な人のほうが楽だ。
しゃべる人と一緒だと、自分は異常ではないかと思うが、無口同士だとその心配はない。ものごとは比較の問題だ。

 駅ビルの寿司屋に入って、テーブル席につき、彼の近況を探ってみた。