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忘れられない人たち

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バーチャルのともだち④


先方の仕事の都合が付いたのか、船で四国まで来られる経路を調べているようだった。だが、その矢先にコロナが蔓延の兆しを見せ始め、その時点でその話をすることはなかった。彼がこちらに来たら、焼き肉を食べに行こうとか、四万十川にドライブしようとか話していたことが立ち消えになった。

或る頃から、夜寝ているときに胃から心臓に掛けて痛みが出るので検診に行くとのメールが来た。検診の結果が出るまでにかなりの時間がかかった。最終的な結果は食道癌ステージ4ということで、入退院を繰り返すことになったようだ。
僅か数か月の間の癌の進行は早くて、自分では何もできないから別居している妻のマンションで看てもらうことになったというものだった。
それからの写メールは胃ろうをしているとか、苦しいとか、もう何もできなくなったとかいうものだった。

最後のほうは、殺して欲しい!という短い言葉が返信された。
苦しい中メールを書いたんだという思いが私には健気に思えて、とても辛くて思い出すと涙がぽろぽろこぼれた。もう安らかになって欲しいとさえ思った。

作品名:忘れられない人たち 作家名:笹峰霧子