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新しい出会い

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その11


私にも悪い癖がある。他人が心細そうにしていたり、日常の生活がおぼつかない状況をみるとつい面倒をみたくなるのだが、友人にも諭されたように、それは自己満足なのだと反省している。

私が世話をしなくても先方には親族がひっきりなしに出入りしている。だからこれからはたまに声を掛けるぐらいの距離を保つのが良いのだと自分に言い聞かせた。

今日彼女は或る重大な病気の懸念があると医師に言われて、独りで検診を受ける為に遠くの病院へ出発した。
数日前まで私は、出発の日に家まで迎えに行って駅で見送りたいと思ったけれどその気持ちをぐっと抑えた。私が自分のしたいようにしたからといって、相手は迷惑かもしれないとの思いだ。

自分の子供ならかなり突っ込んだ行動をしても嫌ならいやと言うだろうけれど、他人は迷惑だと思っていてもうれしそうに、ありがとうと言うに違いない。
そういう微妙な人の心を察知できないのが私の弱い所なのだ。

もし検診を受けて、悪い病気だと診断されたらどんなに気落ちするだろうと想像したりもするが、その気持ちを打ち消して今日は自分の用事を済ませてきた。

彼女が重大な病気でなく唯の一過性の症状だと診断されたらこれほどうれしいことはない。うれしい結果が出て無事に帰宅するのを願いながら、この短編を終ることにしたい。

  

  完



作品名:新しい出会い 作家名:笹峰霧子