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　それでも、すこしはこの質問は彼を楽しめさせたらしく、彼は、口元に曖昧な笑みをおいた。それでも、その稀なものも、また珈琲のけむりにくもって、うすっらとしか見えない。
「いまは、」
「いま？」
「いま、」
「いま、ですか、」
　わたしのたどたどしい口調に彼はまた少し笑ったようだったが、しかし彼はまた笑うことは無く、
「もう恋はこりごりです。もう一生しないでしょうね。だから、これからもひとりをえらびます」
　ただ、わたしにあの忘れられない微笑をおいて、また珈琲をすすった。