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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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女の歯医者さんだった

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「薄くなっています」という表現に引っかかるものがあったが、この際、原因は大した問題ではない。
私はセメントでも砂利でも、痛みが止まるなら何を詰められてもいいと思った。
治療の効果だろう、まもなく、痛みはなくなった。

 W先生は、終始私を大切に扱ってくれた。
処置のたびごとに、
「センセイ、○○して下さい。」
と命令口調ではなく、懇願するように言った。
私に対してこういう口のきき方をする人は多くない。ここ数年記憶にないほどだ。

 〈これなら毎日通ってもいいナ〉と思っていると、W先生は
「センセイ、終わりました。どうもお疲れ様でした。」と言った。
〈お疲れになったのは、W先生のほうでしょう。本当にありがとうございました〉
私はW先生に別れを惜しんで歯科の診察室を出た。