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火曜日の幻想譚 Ⅴ

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597.かごバレ



 かごバレが怖い。

 いきなり奇妙なことを言い出したと思われるかもしれないが、かごバレが怖いのだ。それ以上の言葉があるだろうか。
 まあ、かごバレというのは僕の造語なので、それを説明しなければならないかもしれない。かごバレ━━簡単に言えば、スーパーやコンビニなどでかごに入った商品から今日の晩ごはんがバレてしまうということ、だ。

 このかごバレが最も起こりやすいのはカレーではないだろうか。玉ねぎ、じゃがいも、肉……。と具材が並んだ上にカレールーが乗っかっていようものなら、もう今日の晩ごはんは、行き交う人やレジの人にバレたも同然だ。周囲の人間はみんな、「あ、こいつ今日、カレーだな」って思ってるに違いない。それが妙に恥ずかしい。自分のしようとしている行動が周囲に悟られてしまうこと、それが嫌なのだ。
 僕はそれをかわすために、買い物にトラップを設ける。カレーの日に、あえて数日後に食べる予定の豆腐やお魚を買う。休みの日にちょっとゆでるための、そばやパスタといった乾麺をかごに忍ばせる。別に今、買う必要のない冷凍食品を一品、購入しておく。おかげでわが家の冷凍庫は、子どもが喜びそうなお弁当が何個でも作れそうなほど、食材が凍っている。

 コンビニなんかではもっと直接的だ。サラダをまず食べて、魚肉ソーセージとゆで卵をつまみにこのハイボールを飲み干して、締めはカップ麺。貧しい食生活がバレバレで恥ずかしいことこの上ない。でも、この組み合わせが大好きなんだ、どうかそっとしておいてほしい。そっとしておいてくれているのに、お会計中の心の叫びは止まらない。

 そしてもっと悲しいのは、こういうことを言い出しても大抵、考え過ぎとか自意識過剰という言葉で一蹴されてしまうことだ。考え過ぎ、自意識過剰、確かにそうかもしれない。でもそれは、ただ単に名前を付けただけじゃないか。現象にラベルを貼り付けただけで状況は何も変わっていない。そう言って解決方法を問いただしてみると、せいぜい「気にすんな」と言われるのが関の山なのだ。

 しかし、それでも人は消費をしなければ生きていけない。僕はゆううつを抱えながら、これからもかごバレを避けるために一、二品、食材トラップを混ぜ続けるのだろう。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅴ 作家名:六色塔