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星に願いを:長門 甲斐編

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死神(仮)



「死神」は舌を鳴らし、右手の人差し指を左右に振る

「そーやってすーぐきばをむくー」
(然(そ)うやって直ぐ牙を剥く)

と、俄(にわか)ギャル語で受け流すも
何かに気付いた途端、其の身を屈めるや否や和泉の顎先を掴み上げた

「?!ああん?!」

殊更(ことさら)、歯を剥く
引っ詰めた髪の前髪を振り乱す顔を覗き込み首を傾げる

「あれ?」
「「牙」がないね・・・、「八重歯」?」

「!!馬鹿にするんじゃない!!」と、ばかりに怒髪天を衝く
和泉には悪いが上総は安定の鉄仮面然だ

内心、浮足立つも
彼(あ)の夜を教訓に今の鉄仮面の上総が居る

だが、肝心の「死神」の興味は此処迄なのか
自分達の遣り取りを不言で眺める上総に向き直る

「元気?」と、機嫌を伺うも直ぐ様
「あれ?、老けた?」と、揶揄(からか)う

老けもするだろう
彼(あ)の夜から何(ど)れ程、経ったのかも分からない

「彼女」になった「彼」も
「彼」になったであろう「彼女」も

「星」になったのか
「光」になったのか
将又(はたまた)、「魂」になったのか

最初から最後まで「管轄外」
「悪魔」が知る由もない

唯、「彼」が気に掛かる
唯唯、「彼女」が気に掛かる

其れでも「死神」に訊(き)く気はない

何処迄も馴れ馴れしい「死神」
何処迄も余所余所しい上総の態度、は毎度の事だが
和泉も漸(ようや)く思い至る

「!!貴様は何時ぞやの「死神」!!」

寝台(ベッド)から矗(すっく)と立つ也(なり)
上総と「死神」との間に入り込む和泉が揚揚と指を差す

寄り目で「其れ」を見詰める「死神」が困り笑顔で頷きながら

「うんうん」
「君とは「初めまして」だけどね」

然(そ)うして上総に対して片目を瞑(つむ)る

「君とは感動の再会だけどね」

今更だが

此(こ)の夜も
彼(あ)の夜も「彼」の姿で立ち会う「人物」は「死神」と名乗りはしなかった

然(さ)れど「死神」だと疑いもしなかった

正体を知った所で
正体を知った所で自分に「何」が出来る?

現に「何」も出来ない

「次に」

彼(あ)の夜の、「死神」の言葉が繰り返される

「次に」
「次に」

「次に(会えたら見逃さないよ)」

「次はない」

然(そ)う返した自分は余りにも浅墓(あさはか)だ