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呪縛の緊急避難

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。ご了承願います。途中から、自分の感情がむき出しになった箇所があるかも知れませんが、不快であれば、スルーしてください。(ただし、物語の核心に当たる部分ですので、読まれることをお勧めします)あしからずです。

                 親友

 近くの大学を卒業し、今の会社に入ったのが昨年、今年で二年目となる涼川あいりは、会社では結構モテる方だった。それは自他ともに分かっていることであって、事務所に百人はいる社員の中で半分は男子だとして、二十代、三十代は二十人くらいであろうか。
 中には彼女がいる人、結婚している人もいるので、それを差し引いて、十数人。彼らの半分はあいりを気にしていることだろう。
 男性の視線を感じることはいつものことで、同僚の女の子が、
「あの人いいわよね」
 という男性であっても、彼の視線はあいりをいつも捉えている気がした。
 女性の勘は結構当たるもので、見つめられたあいりとすれば、簡単にいなしているように見えて、どちらかといと、
「嫌な女」
 として見られていたことだろう。
 しかし、それでもこの会社ではそれくらいに毅然としていなければ、ダメなようだった。女性陣の間では、この会社には結構下衆な男性が多いという話を聞いていて、あいりとすれば感じた視線で、誰がどのようにひどいのか、ある程度分かっていた。
 そんなあいりだったが、一人の男性に熱をあげていた。その男性は会社でも結構人気のある男性で、ただ、その評価としては微妙だった。
「何と言っても格好いい」
 として、変な文句なしで好きになる人、
「あの視線怪しいわよ。何考えているのか分かったもんじゃない」
 という、女たらしだと思っている人とに別れていたのだ。
 あいりは、なぜか前者だった。
 他の男性に対しては、結構アッサリしているのに、この男性に対してだけは、積極的であった。そのおかげで他の男性を遠ざけることができたのであるが、その態度の極端さに、まわりの女性陣でも近寄りがたいものを感じていた。
 彼女が気にしているその男性は、名前を川本晋三という。女の子によっては、
「あんなやつのどこがいいのよ」
 と、その本性を見抜いてのことなのか、結構悪評があったりもしていて、男性からもあまり好かれていなかった。
 相手が女性であれば、甘い言葉をかけて、プレイボーイを気取っているところがあるが、男性に対しては、遠慮というものを知らない。およそ、優先という言葉を知っているのあ疑問に感じるほどで、公共交通機関の優先席ですら、平気で占領しているような男だったのだ。
 特に女性のことに関してはひどいもので、自分が目を付けたと思えば、他の誰かが近寄ってくるものなら、露骨に近づいてくる人間を遠ざけようとする。それでも女性には一律に優しく、その優しさが怪しかったりする。
 要するに、
「誰にでも優しい」
 というだけの男で、自分だけを愛してほしいと思っている女性からすれば、すぐにその本性を見抜いて、離れていくのだが、ある共通点のある女性は彼にコロッと騙されるようで、最後にはひどい目に遭って、捨てられるというウワサもいろいろと蔓延っているようだった。
――僻みや嫉妬などではないのかしら?
 という思いは、どういう部分の共通点なのか分からないが、彼を真正面から信じている女性たちには、そう思えて仕方がなかった。
「あの人はとにかく軽い」
 これが、一度彼を付き合って、愛想を尽かした女性の共通の意見だった。
 言葉が軽い。言っていることが誰であっても同じことを言っているのだから、軽く思われるのも当たり前だろう。一世一代の愛の告白であっても、相手が白けて聞いていれば、これほど滑稽に見えるものはない。そんなこととは知る由もなく、晋三はいつもヘラヘラしているのだから、始末が悪い。
 そんな男を気にしているあいりのことが気になっているのは、友達の山口真美だった。真美はこの会社に入社した時の、唯一の動機の女性だった。あいりの方は四年生の大学出身だったが、真美の方が短大主旨インだった。年齢としてはあいりの方が少し上になるのだが、いろいろな意味でsっかりしているのは、真美の方ではなかったか。
 男性とお付き合いした経験がほとんど皆無に近いあいりに比べて真美の方は結構何人かと付き合っていた。高校時代からモテていたようで、
「私、恋愛経験豊富なの」
 と、嘯いていた。
 あいりが普通にしていて男性から気にされることを、真美は少し嫌な気がしていた。
「私なんか、こんなに努力しているのに」
 と思うからである。
 男性ウケのする化粧の仕方であったり、男性の気をどうやって引いたらいいかなど、短大時代に、散々教えてもらったり勉強したりした。ただ、それは高校時代からも同じで、高校の時も女子高だったが、女子だけだと結構大胆な話ができるというもので、
「どうすれば男子にモテるか」
 などという会話はしょっちゅうだったようだ。
 あいりの場合は、ずっと共学上がりだったので、そのあたりはよく知らない。いつも静香で黙っているところが多く、女子の間では、
「目立たない子」
 というイメージがあったにも関わらず、なぜか男子は彼女が気になるのだ。
 一つのクラスに一人くらいはいる生徒なのだが、女子仲間からすれば、希少価値に見えるようで、それだけに胡散臭さを感じる女の子もいる。
 そんなあいりと真美が同じ会社に同時期に入社した。
 あいりは真美を意識していなかったようだが、真美の方ではあいりを大いに気にしていた。自分が今までかかわってきた女性の中には、まったくいないタイプだったからだ。
 真美がモテたのは、やはり半分は努力によるものだろう。ただ、もちろんそれだけではない。努力しても男性にモテたいという貪欲な気持ちを持った女の子は、それだけ説教性を持っている。男性というのは、そんな積極性を持った女性に惹かれるものだ。ただ、しいていうと、そんな女性を好きになったり、気にしたりする男性は、性格的によく似た人ばかりであろう。
 だから、あいりが本当に好きになってほしい相手が違うタイプの男性であれば、あいり自身、あまり自分がモテていると思わないだろう。
 しかし、まわりの女の子は年頃の女の子なので、敏感な子が多い。あいりが男性の目を引いていることくらいは分かっているので、そんな彼女が、
「私はモテない」
 などと口でもしようものなら、
――何よ。この子。お高く留まっているわ――
 ということになる。
 しかし、あいりが、自分をモテないと思うのは無理もないことで、別にまわりに嫌味を言っているわけでもない。それを分かってあげられないのも、この年頃の女の子同士の悲劇なのかも知れない。
 あいり本人としては。
作品名:呪縛の緊急避難 作家名:森本晃次