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レインボーマン対ミスター・フォックス


 
「現金での受け渡しはどないしたって成功しません!」
 
画像:曽根達夫 アフェリエイト:罪の声映画版
 
と〈ギン萬事件〉の主犯、事件当時の若き曾根達夫(中央の男)は映画のこの場面で叫んだ。犯人一味は悪の組織だ。悪の組織にも反省会が必要である。
 
「悪の組織が反省会? 本当か?」
 
本当だそうである。それはこの本に、
 
画像:岡田斗司夫世界征服は可能か110-111ページ死ね死ね団反省会
画像:岡田斗司夫世界征服は可能か表紙
 
こう書いてあることでわかる。そして上に見せた画は、犯人一味の反省会を描いたものなのである。
 
事件の犯行グループが鍋を囲んで反省会をやっている。
 
それはいいとして、そこで大声を出すもんだから店の者に聞かれている。
 
画像:覗き見する店員
 
『レインボーマン』以下じゃん。反省が足りんのではないか。と言いたいがその前におれ自身の反省をしましょう。前回、又市=丸大食品の脅迫について、この映画はそれがいつかを示していないといったことを書いたけど、よく見直すと、
 
   *
 
小栗旬によるナレーション「〈キツネ目の男〉が捜査員の眼に止まったのは、又市食品脅迫事件。犯人は、黒澤明の映画『天国と地獄』を模倣。現金を入れたバッグを持って、電車に乗るよう指示した。そのとき、車内で不自然な動きをしていたのが〈キツネ目の男〉」
 
画像:天国と地獄作戦映画版
 
と言ってそれが《1984年6月》なのを見せてはいました。ごめんなさい。
 
が、でもそれだけでやっぱりこれが世間には長く秘匿されたことや、〈彼ら〉もまたマスコミに手紙を送らなかったことなどは明かさず、この件では社会が劇場にならなかったのは見る者にわからない。この点についての疑問を述べる者もない。それはこの、
 
画像:グリ森本4冊
 
4冊すべてと『未解決』の番組版やウィキのまとめにも共通することで、事件がマスコミの視点でしか語られておらずマスコミに都合悪いことには誰も触れないのを示すものだ。『罪の声』の本も映画もまた同じで、この〈天国と地獄作戦〉が何を目的としたもので、一連の事件の中でどんな意味を持っているのかを問おうとしていない。実際のグリ森事件の中でも特に興味深い局面であるはずなのにだ。ちゃんと触れずにサラッと撫でただけで済ませてしまっている。
 
のがおわかりになるだろうか。もちろん原作小説で、
【製菓会社だけを標的にしたものではない、と萬堂を油断させるため】
と書くだけで済ませたものがダメになってしまったからなのが明らかで、だからなんにも説明のつけようがなくなってしまっているのだ。
 
だからエンデンブシは、
 
「どうしてギンガと萬堂の間に又市があるの?」
 
画像:ショッカーの戦闘員に質問する子供 中島らものますます明るい悩み相談室表紙
 
と訊かれても納得のいく応えができない。そしてこのときに現れた〈キツネ目の男〉がどんな人間で、一味の中でどんな役割を持つ者なのかマトモな説明をすることができない。ろくに仮説も立てられない。小説の中でも、
 
画像:罪の声324-325ページキツネ目の男とは
アフェリエイト:罪の声
 
とするだけでごまかしている。
 
映画もまた、
 
画像:映画のキツネ目 こうだが、まるで、画像:金正日金正日を狙え表紙
 
こいつみたい。〈キツネ目の男〉は北朝鮮次期総書記の若き頃の姿であった!なんてなことに無理矢理しようとでもしてるかのようである。
 
実際の〈キツネ目の男〉はチビデブの短足でなくて180センチ近くの長身。NHKの本によれば、
 
画像:捜査員300人の証言126-127ページ
アフェリエイト:捜査員300人の証言
 
こういう人物である。決して映画の、
 
画像:キツネ目の写真
 
こんなんじゃないはずである。って言うか、こっちだったの? CMで見た時おれはてっきり赤い服の方だと思って、これを枠で囲んじゃったよ。
 
画像:赤い服の男
 
前に見せたやつね。NHKの再現ドラマから〈天国と地獄作戦〉を見せると、
 
画像:天国と地獄作戦再現ドラマ版1
 
画像:天国と地獄作戦再現ドラマ版2
 
こうだ。白い服を着るよう命じた現金持参人を電車の隣の車輌から窺い、ホームに出たところで近づき周囲をグルグルまわった。傘を持った灰色のスーツの男。これが〈キツネ目の男〉が事件に登場した場面である。わかると思うが、当時を知ってる人間には結構カッコいいイメージさえ持たれている。不気味な感じがむしろカッコいい、というね。
 
エンデンブシもこの映画を作ってるやつらもそれが気に食わないんだろう。だから〈不気味〉なのでなくただ〈気持ちが悪い〉だけの変なやつのように今の人間に思わようとしている。
 
おまけに在日朝鮮人か、被差別部落の出身者に違いない、とでもいうことにしようとしている。「日本人は死ね死ね」と思う『レインボーマン』のミスターXみたいなやつなんだ、と。ために金正日みたいな感じに役者にキャラを作らせている。
 
としか思えないだろう、あれは。ねえ。と、そんなところでそろそろこの、
 
画像:グリ森本3冊
 
3冊を読んで事件にだいぶ詳しくなったおれが、〈キツネ目の男〉――いや、これからは〈F〉と呼ぼう。〈F〉について現在思うところを述べよう。次に書くのは【おれが現在思う】であって後で変わるかもしれませんが、
 
   ***************
 
〈F〉はおれがいま思うに、まずはまた浅田次郎・著『初等ヤクザの犯罪学教室』からスキャンして見せるが、
 
画像:初等ヤクザの犯罪学教室30-31ページ
画像:初等ヤクザの犯罪学教室表紙
 
このような人物である。もちろん〈陽気でノリのいい〉、留置場の常連だったりするけど刑務所行きになるような下手は滅多に打たない人種だ。イタコ商売なんかしてたりするかもしれないがだからと言って子供を亡くした親に近づき、
「ワタシには霊界にいるアナタのお子さんが見えます。名前はM子ちゃんですね」
なんていうようなことまではやらない。決して本当のワルではない、浅田次郎の言う〈優秀な犯罪者〉。
 
それがおれの考える〈F〉だ。一味の中では〈5番目〉ないし〈6番目〉。85年2月12日に名古屋のポストで目撃されている女が〈4月24日の録音の声の主〉あるいは〈少女とふたりの男児に声を吹き込ませた4番目の仲間〉なのだとし、他にもうひとりくらい先にいるかもしれないものとして、という意味だが、最初の勝久氏誘拐の3人組はそれぞれ身長が160から170センチ。〈寝屋川アベック襲撃〉の3人はそれと同一と見られるということなので180センチに近い〈F〉は明らかに違う。
 
だから後から加わったのではないかとおれは考える。おそらくグリコの脅迫にはまったく関わっていない。そしておそらく3月から6月初めにかけてのアリバイを持っている。
 
どこか遠くにずっといたとか、ひょっとするとその間は警察の留置場か拘置所にでもいて、不起訴を勝ち取り〈口笛を吹きながら〉外に出てきたところだったりするのかもしれない。そして丸大で仲間に加わる。
 
一味の中での役割は、
作品名:端数報告5 作家名:島田信之