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狐鬼 第二章

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漸(よ)う漸(よ)う落ち着いたのか

薄焼き卵を巻く昔ながらのオムライスを頬(ぼお)張(ば)るすずめを眺めて
稲荷寿司を食らう白狐が不図(ふと)、長角皿(ちょうかくざら)の端に乗っかってる
新生姜の甘酢漬けに気が付いて訊(たず)ねる

「何だ此(こ)れは?」

「え?、「ガリ」?」
「え?、今迄(いままで)、付いてなかった?」

聞き返されて遡(さかのぼ)る

「記憶にない」

カウンター越し、二人の会話を聞いていたはつねが付け足す

「然(そ)うなの然(そ)うなの」
「今迄、すっかり忘れてたのよね」

其(そ)れで売れ行きが良くなかったのかしら?、とは思うが撤回(てっかい)する
此(こ)のログハウス喫茶店(カフェ)に「和風」は似合わない

先述(せんじゅつ)通り、稲荷寿司は既(すで)に品書(メニュー)にない
是又(これまた)、品書(メニュー)にない「モノ」を手に此方(こちら)へやって来る

「御寿司には「ガリ」然(そ)して、「アガリ」」

「アガリ」?と、首を傾(かし)げる
白狐の前に熱めの粉茶を注(そそ)いだ湯吞茶碗を置いた

「然(そ)う、「アガリ」」

満足顔で頷(うなず)き踵(きびす)を返すはつねを見遣(みや)り
其(そ)れとなく鼻を寄せる何とも茶の色の濃い香りには馴染(なじ)みがある

其(そ)れならば
取り敢(あ)えず馴染(なじ)みのない「ガリ」とやらを食ってみるか
一纏(ひとまと)めの「ガリ」を摘(つ)まむ也(なり)、一気に口の中に放り込む

ヨーグルト(紙容器 事(ごと))然(しか)り
キウイフルーツ(皮 事(ごと))然(しか)り、丸ごと吞み込む獣姿の白狐と重なる
すずめが「あ、」と声を上げた瞬間、白狐が無言で立ち上がる

流石(さすが)?に駆け込む事はしないが
急ぎ足で御手洗(トイレ)を目指す白狐がはつねの前を通り過ぎる

「え?、え?、如何(どう)したの?」
鼻歌交じりサラダボウル片手に問(と)い掛(か)ける彼女にすずめが答えた

「「ガリ」の一気食い」

「弟」擬(もど)きの背中を目を真ん丸くして見送る
然(そ)うして御手洗(トイレ)の木製片開き扉が閉まるのを確認した後(あと)
はつねは上半身を仰(の)け反(ぞ)らし笑い出す

迚(とて)も美美(びび)しい見た目からは想像もつかない
豪快(ごうかい)な笑い方に吃驚(びっくり)したすずめだったが
何時(いつ)しか釣(つ)られて笑っていた

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫