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狐鬼 第二章

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「元元さ」

ログハウス喫茶店(カフェ)店内
食卓(テーブル)席に置くだけ置いた、お冷の杯(グラス)を片付けながら
はつねがぽつりぽつり話し始める

手伝う白狐もすずめも
此れは「くろじ」に充てた言葉だと察して無言で接する

「閑古鳥が鳴く、店だしさ」
「下手したら屋根裏で飼ってるもかも知れないしさ(笑)」

抑、夏場以外は
地元客相手に細細と営業している商売だ

気にするといえば気にする
気にしないといえば気にしない、其の程度だ

だから、と振り返える

「!落ち込まないでよ!」

カウンターテーブルの隅で
小さく蹲(うずくま)ったままのくろじに向けて上半身を仰け反らし笑い出す

美美しい見た目からは想像もつかない
豪快な笑い方に釣られてすずめも微笑うが其 (すずめ)の様子を窺(うかが)う
白狐の目と合う也(なり)、口脇を下げる

(白狐の)視線から逃げるように
カウンターテーブルの隅、くろじに視線を逸らす

「一肌作戦」は失敗(?)した

目を落とす自身の足元
くろじは人差し指で延延、「の」の字を書き続ける

「女(子)って怖い」
「女(子)って怖い」

然う聞き取れる言葉にすずめは心の底から同意する

そうだ
女(子)は怖いのだ

自分は「花」組織委員会で辟易(うんざり)する程、思い知った

然して
当たり前の事だが

「花精神」も
「花」組織委員会も「学校」の中でしか通用しない

「学校」という集団生活の「外」では

其の「花」が枯れてしまおうが
其の「花」を手折るのだ

愈愈、(カウンターテーブルの)隅迄、迎えに来る
はつねにくろじがぼそぼそ言う

「、駐車場が「満車」になってたのにぃ」
「、開店(業)以来なかったのにぃ」

「失礼ね!」
「一回?、くらいはあったわよ!」

「、一回?(くらい)」

「そう!、開店(業)初日!」

途端、頭を抱えるくろじの背中を叩くはつねが続ける

「大体、地元客は散歩がてら歩いて来るし」
「駐車場は遠方(一見)のお客さん専用でしょう?、(満車には)ならないならない」

夏場にしても浜辺の海水浴客が「海の家」宜しく気軽に寄るのだから
駐車場を利用する客は然う然ういない

「、そうなの?」

「そうなの!」

自分の言い分を一刀両断する
はつねの顔を上目遣いに見詰めるくろじの口元が心做しか綻(ほころ)ぶ


ログハウス喫茶店(カフェ)店内
食卓(テーブル)席に置くだけ置いた、お冷の杯(グラス)を片付ける
手を止めるすずめが視線を動かす

先程と相も変わらず杯(グラス)回収作業を黙黙とこなす
涼しい横顔を見せる白狐と向き合う

そうだ
女(子)は怖いのだ

そうだ
女(子)である自分だって怖いのだ

「二度と思わないでください」

角立つ声に振り返える
白狐は「当然だ、議論の余地 等(など)ない」とばかり頷くも
女(子)である(笑)すずめは止まらない

「二度と「働こう」なんて思わないでください」

其の言様(いいよう)に内容に
はつねもくろじも吃驚(びっくり)した顔で立ち上がる

心配げに
此方を窺(うかが)う二人には申し訳ないが
すずめ自身、退く訳にはいかない

白狐相手だからこそ退く訳にはいけない

「二度と認めない」

「一度」だって認めるつもりはなかったのに、と唇を噛む
すずめは怒っている
すずめは白狐の行動に怒っている

其れ以上に

伊達眼鏡越し翡翠色の目を伏せる
白狐に自分の気持ちは筒抜けなのだと嫌になる程、実感する

到頭、押し黙るすずめよりも
以前、押し黙ったままの白狐を不憫に思ったはつねが助け舟を出す

「すずめ、ごめんね」
「私がみやちゃんにお願いしたの、ごめんね」

すずめに駆け寄るはつねが

其の手を取る
其の手が震えていた事に驚ろく

(自分の)お節介の果(はて)
俯向(うつむ)くすずめを前に罪悪感が半端ない

どうしよ泣きそうだ
はつね自身、知らず知らずの内に鼻を啜(すす)る

「だから、みやちゃんは悪るくないの」

はつねの言葉に
すずめが頭を左右に振りながら答える

「分かってる」
「分かってる」

はつねの言う通り
「みやちゃんが悪るくないの」くらいは分かってる

何故なら

「みや狐は立派な人(?)だから」

然う言い切る
すずめを前にはつねは目が点になる

(無職の)何が?!
(博打打ちの)何処が?!

思い切り心の中で突っ込んだ結果
胸が詰まる(思いの)はつねが背後のくろじを振り返える

飽く迄、傍観する気だった
くろじが慌てて満面の笑みで親指を立てるや

「すずめちゃん」

仕方なく
本当に仕方なくすずめに声を掛ける

「俺はね」

「立派な人は」
「立派に働くと思うよ」

「なんてったって立派なんだから(笑)」

「立派」「立派」って言ってて阿呆らしい
「立派」等(など)、人間相手に使う言葉じゃねえな

だとすると
みやちゃんは「何」になるんだ?

埒(らち)も無い事を考える
くろじを余所に辛抱 堪(たま)らんはつねが声を上げる

「立派に働いて!」
「立派に守りたいから!」

「すずめを!」

お節介も
極めれば「善意」になるのだろう

すずめの手を取る
はつねが自己満足 此(こ)の上なく開き直り強く握り締める

瞬間、すずめが顔一杯に髪を振り乱す

「分かってる」

みや狐は此れ以上ないくらい
自分を守ってくれてる

分かってる
分かってるの

「分かってるから、「ちどり」」

其の手の温もりに不覚にも涙が出た
其の手の温もりに不覚にも其の名前を呼んだ

知らない名前を口にする
すずめの顔を墨墨(まじまじ)と見詰める

「はつね」は似ていない

「歳」も違う
「顔」も違う
「声」も違う
「何」も違う

然う思えば思う程、「はつね」は似ていない

「ちどり」の名前を口にする
本人が一番、驚いたのか

一粒

溢(こぼ)れた涙を手の平で拭い「ごめんなさい」と頭を下げる
すずめがログハウス喫茶店(カフェ)を足早に出て行く

突然の出来事に茫然と立つ
はつねだったが喫茶店(カフェ)の木製出入口扉の閉まる音に
遅れ馳せながら反応する

然(しか)し

追い掛け駆け出す
はつねの目の前に立ちはだかる白狐に依って(阻)止められる

「?!みやちゃん?!」

勢い余って
白狐の胸元に飛び込むはつねの頭突きを食らったのか
伊達眼鏡が喫茶店(カフェ)の床に転がる

「ごめん!」
「ああ、ごめん!」

流石に「めんごめんご」と茶化す事なく
伊達眼鏡を探して床に這い蹲(つくば)るが見当たらない

「此方(こっち)」

足元に転がって当たった
伊達眼鏡を拾い上げるくろじが大人しく待つ白狐へと手渡す

「すまん」

感謝だか
謝罪だか何方(どっち)付かずの礼を述べる
白狐を揶揄う気満満(何故?)で相手の顔を覗き込むが其の思考は一瞬で吹っ飛ぶ

黒髪の隙間から
真っ直ぐ見詰める翡翠色の目に自分の意思とは関係なく見入る
くろじに掴まり立ち上がる、はつねも漏れなく翡翠色の目に見入る

此れって、天然?

脳裏に浮かぶ
「外(国)人」説が愈愈、濃厚になり二人が顔を見合わせる(何故?)中
作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫