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狐鬼 第二章

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突如、隣室 (はつねとくろじ)から
上がる叫び声に不本意ながら反応する(両)耳を白狐は素早く伏せる

同時に

毎夜(まいよ)、「獣」姿とはいえ
其 (すずめ)の身体を抱(かか)えて横になる相手 (すずめ)に吐き捨てる

「禿(は)げる」

当然、目を剥いて身を竦める
すずめ自身は気が付かれているとは思わず内心、あわあわする

「好い加減、禿(は)げる」

「あうあう」言葉に詰まりながら
(手元の)毟り取った白毛を元通りに戻そうと(戻るか!)、掻き集める
すずめの頭を何本にも分かれた尻尾 等(ら)が次次、突(つつ)き回す

「俺に(此の俺に)」
「言う事はないのか?」

其(尻尾)の内の一本が
自身 (すずめ)の顎を掴み上げた瞬間、すずめは慌てて謝罪する

「御、御免なさい」

まあ何だ
自分(白狐)で催促して置いて何だが

「謝罪(あやま)るくらいならとっとと寝ろ」

と、突慳貪(つっけんどん)に言われるも
白狐の言葉に素直に首肯く、すずめが白毛の首元へと顔を埋(うず)める

然うして

何(ど)れ程、時間が経ったのだろうか
途切れ途切れ(すずめの)寝息が聞こえてきた頃、白狐は翡翠色の眼(まなこ)を閉じる

「寝る」と言う感覚の中で
微睡(まどろみ)迎える明日は今日よりも「幸」があればいい

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫