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第四話 くらしの中で

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相対的な過去と現在 その1


ずっと辛いことが続いているような気がするが、その時点ではそのことを絶対的なものと捉えている。でも時が経ち過去を振り返るとあの時はよく耐えられたもんだと思われ、現在のことは辛いとは思えなくなる。
苦労と感じる状況は絶対的なものではなくてその時その時に感じるものなので温度差がある。

今の生活状況では机に伏して泣くことなど一つもないが、あの時は随分辛かったのだろうなと振り返る。
バーチャルの人とメールや電話で話した後、辛くてしばらく泣いていた。
リアルの生活があまりにも過酷でそれを癒してくれる者は誰もいなかったからだ。

家庭内別居ともいえる生活の中で、母屋に寝起きしていた相棒は病気だったので
愛し合えるどころか、いつ襲ってくるかもしれない魔物が近くにいるという感じだった。その状態は随分と長い年月、十年をゆうに超えていた。

世間体では夫がいるというので親しい人が訪ねて来ることもなく、母が亡くなってからは益々その状況はエスカレートして私は孤軍奮闘していた。
遠くに住んでいる二十代の娘らは実状を知らない。彼女らに訴えることはしなかったので精神的な同情があるわけではなかった。

作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子