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第四話 くらしの中で

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未熟な人間わたし


人生って短いねと子供が言う。
私は娘の年にはそういうことは考えたこともなかった。
今娘は中年になり私は年を取ったが、このごろ確かに人生って短いなと思うようになった。

娘は子供のときから死というものを考えていたという。
自分はどこから来たのかとトイレの中で考えていたよという。

そういう子もいれば、私のように何も考えず目の前のことをこつこつやるという子もいる。
私は小学生の時から学校の宿題とかの勉強はきっちりやるほうだったので成績は良かったがそれ以上の抽象的なことを考えたことはなかった。そういう傾向は大人になってもずっと続いていて、将来の設計のことや子供を育てるに当たってどういう人間に育てようとかも全く考えなかった。
ただ目の前のこと、例えば教育的に良い本など知識を得られるものは惜しまず買い与え、栄養のことはきっちり考えて食事をさせ、自分がほったらかしで育ったので前歯が虫歯になり早くから差し歯になったので子供には虫歯を作らないように気をつけた。歯科にクリーニングをしに連れて行ったり、パンビとかいう虫歯予防の薬を毎晩飲ませたりもした。

大局的な人間像を描く能力を持たずただ目の前のことを強制的にさせていたように思う。まるで動物を飼育するように。

従って、子供達は母親の愛情を感じなかったと成長してから言われたし、まともに母性ある母親として懐いてもくれなかった。
私のような人間は何かをこつこつすることはできても、心を育てることのできない人間だったと今にして思う。


 完
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子