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第四話 くらしの中で

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その三



ドラマでは現実では見えない、人の心の内がはっきりわかるように表情や裏での会話が構成されている。
ドラマだからかなり大袈裟な表現に作られているので、人の心を読み取る能力が極めて劣っている私には現実の人の裏表を見るのに役立っている。

頭が空っぽの人から明け透けに裏で交わされた会話を聞かされたとき、そういうことを話していたんだと、そこで初めて実状を知るという具合だ。
あまりに人を疑うことを知らなかった自分なので、それを知って初めてにこやかな笑顔の裏に隠された夜叉がいたことを知る。

それがあまりのショックなため、その後多少なりと良い関係になっても一度抱いたトラウマを消すことができなくなる。
楽しく会話をした後でもすぐ又元の疑念の気持ちが沸々と湧いて、あまり話すまいと心に決めるのだが、又同じことを繰り返す。

最近は人間の裏表には格差があることを、生き残っている高齢者に対して感じるようになった。
しっかり世間を見据えることができる人たちは、何時、どのようにして人を見る眼を養った来たのか。

或る友人が言ったことがある。勤めをしていたら頭がきりきりするような事は一杯あったよと。家庭の中でも嫁姑の問題だけではなく、色々な事情を抱えて来た人は自分の本音を表に出さないで自分なりにその難事を乗り越えて来たのだろう。
有象無象の中での忍耐で培われたものは人格の一部となり、確たる足取りで生き抜くことができる、そんな人を羨望の目で見ているこのごろだ。

私のように、家族関係の問題で悲しんだり怯えたり、時には笑ったりの喜怒哀楽の中でのみ生活したことは(苦労と言えば苦労だったが)世間を渡る知恵にはならないようだ。

 完
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子