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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第38話 再びの別れ






「わたくしを…前線にですって!?」

「そうだ。さあ、手をこちらへ」

そう言って、ロペス中将は恐らく軍用のコードリライティングを差し出した。私は首を振る。

「お断りします!わたくしはメイドロボットです!戦闘などしません!」

ロペス中将は首を傾げ、元に戻すと、「ククッ」と笑った。そしてこう言う。

「まさしく報告通りだ。君は通告に応じない事が出来るロボットなんだな。それならば交渉をしよう」

私は、中将に言われた事の意味がよく分からなかった。今の時代なら、ロボットでも意思決定の自由位はあると思っていたからだ。

中将は腕を組み、顎を引いて私を見る。

「ここ、メキシコ自治区の、中枢へは絶対に入らせてはいけない。それは分かるな?」

私は、頷いたり首を振ったりはしなかった。なるべく興味がないように見せかけた。

「そして、君は唯一、一般に残っていた13体の兵器の内の、1人だ」

話の帰着がどうなるのかは、私は分かっていた。それでも、お嬢様の傍に居たかった。

「君達が出てきてくれれば、勝てる可能性は高い。メキシコには軍費が少なかった。アメリカと戦えるほどの兵器など持っていない。でも、もう奴さん達はこちらへ向かってる。一刻の猶予もない。それに、私だって君より弱い。そんなのは当たり前だ」

私は、また抵抗する気力を失くし掛けていた。

“メキシコを守れなければ、お嬢様が…”

「この国で一番強い兵器は、君達なのだ。使わない手はない。分かったら家族の者に別れを言って、車に乗れ。待つのは3分だ」

そう言って中将は、返事も待たずに外へ向かって歩いて行った。私は仕方なく、避難所の奥へ引き返す。




「ねえ、マリセル…変だと思わない?」

「何がでしょうか?お嬢様」

私はマリセルに、ちょっとこっそりこう言った。

「あんなに団結して捜査をしていたみんなが、それぞれ別の土地で、互いに戦ったりする事よ。みんな嫌だと思わないのかしら?」

そう言うと、マリセルはこちらを向いて、こう言った。彼の様子は真剣だった。

「お嬢様。わたくし達はロボットなのです。主人の命令は絶対です。彼らは自分の主人からの通達を見て、それぞれ自分の家に帰ったのです。二国間で全く対立するのが戦争です。その対立によってロボットが別たれたとしても、それは彼らにとって不満にはなり得ません。命令を遂行出来なかった時の方が、彼らは悲しむでしょう」

私はそれを聞いて、びっくりしてしまった。

「そんな…じゃあ、ロボットには何も決められないと言うの!?」

思わずマリセルにしがみついて揺らそうとした時、ターカスが帰ってきた。

「ターカス、お帰りなさい」

そう言ったのに、ターカスは俯いてタンクを持ったまま、私達のバース入口に立っていて、こちらへ来ようとしなかった。

「どうしたのです、ターカス」

マリセルが近寄っていこうとすると、それを構わずマリセルとすれ違って、ターカスは奥に座り込んでいた私の所へ来た。

彼は、悲しそうな顔をしていた。でも、泣いてはいなかった。とても悲しそうな顔で、ターカスはこう言った。

「お嬢様、お嬢様はわたくしが元は兵器だった事を、もうご存じと思います。ですから、わたくしは戦場へ行かなければなりません。つい今しがた、軍の方から、「徴用する」と言い渡されました…」

私は驚いてしまって、でも充分有り得るとも思い、何も言わず、口元を押さえた。

「お嬢様、心配しないで下さい。きっと帰って来ます。ターカスはあなたの元へ戻ります」

「うん」と言わなければいけないと分かっていたのに、私はすぐにはそう出来なかった。ターカスの腕に両腕でしがみつき、しっかと放さずこう叫ぶ。

「ダメよ!そんなのダメよ、ターカス!」

その時ターカスは、私の腕を振りほどいた。彼は、一言を残して、あっという間に部屋を出て行ってしまった。

「必ず戻ります」




「お、来たな。あと10秒だ。乗んな」

私は、黙って軍用車の後部座席に乗った。そこには、私と同じ型のロボット達が、また集められていた。20人程は座れる車に乗っていたのは、13人だった。

運転手らしき軍人の隣で、中将は葉巻を吸っていた。外を見ると、私達の車が、避難所へ急ぐ人々の間を縫っているのが分かった。

「本部での会議が終わり次第、配属部隊を命令する。如何なく力を発揮してくれよ」

そう言って中将はまた、「ククッ」と笑った。