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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第30話 止めないと






「まあまあ、ホーミュリア殿、落ち着いて。テロリストとしての指名手配と言っても、見つかって無実であれば、ターカスはどうともされませんよ」

マルメラードフさんはそう言ったけど、私は信じていなかった。その場に居る大人は、“エリック”やターカスを、“戦争を起こそうと目論んでいる”としか見ていなかったのは、明らかだった。

14歳の私に、戦争についての知識なんかほとんどない。この間、ターカスから、過去の大戦の数を教えてもらったばかり。でも、これだけは言える。そう思って、もう一度口を開いた。

「ターカスは、その“エリック”とやらに連れ去られたんでしょう!?だったら、戦争を企んでいるとしたら“エリック”だけで、ターカスは利用されているんだわ!“エリック”を探しなさいよ!」

私がそう叫んでアームストロングさんを見ると、彼は指で頬を搔いていた。その能天気な仕草が癇に障り、私はまた叫ぶ。

「ターカスに罪を着せるような真似は、わたくしが許しません!だって、彼は私の家のメイドとして働いていたのよ!そんなロボットが、急に戦争を始める気になるはずがないわ!どう考えても不自然よ!ついさっきまでは主人の夕食の材料を探していたのに、急に戦争をする気になんかなるかしら!?」

そこまでを言ってしまうと、アームストロングさんは困っているような目でこちらを見た。そして、私といくつか話をする。

「確かに、そんな事は普通ならありえません。彼は兵器基盤とはいえ、メイドロボットとして活動していた。「戦争をしよう」なんて、考えるはずもない。そういうふうにプログラミングされないと、ロボット達が一般家庭へ入る事は出来ません」

「そうでしょう?」

「でも、そうするとおかしい事が出てくる。彼はすでに、ポリスへと潜入しているかもしれないんです。ターカスでないなら、彼の仲間がそうしたはず。本来、彼らに課されているのは、「人間の利益となる」こと」

「え、ええ…」

「公官庁への無断での侵入が、私達の利益になりえるはずがない。彼らはすでに、私達の課したルールから外れている」

「それって…」

「ターカスが、前と同じターカスで居てくれるかは、分からないという事です」