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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第14話 武力が足りない






「ではお嬢様、過去に行われた世界大戦の数をお答え下さい」

「えっ?数…?えーと、えーと、確か最後が…あっ!そうよ!歴史記述は途中で二度途絶えているから、三回分の歴史の中の大戦の数、よね…?」

「ええ、そうです。そこまで分かればあとはもう少しですよ」

「うーんと、うーんと…6…12…2……20回!」

「正解です、ヘラお嬢様。それでは次の設問で最後となります」

「わかったわ」

私たちはその日、「地球史」の勉強をしていた。ターカスがウェッブから「テスト」を持ってきて、ここ何日かで学んだところのおさらいをした。


「点数は89点。これはとてもよい結果ですよ、お嬢様。今日はごほうびに甘いお菓子を焼きましょうか?」

「わあ!やったわ!ええ、ええ、そうしてちょうだい!」

するとその時、私はある一つのことを思い出した。


“そういえば、私たちが家出をする前に、屋敷ではマリセルが「バステマ」を焼いてくれていたんだわ…”


「どうしましたか?お嬢様」

私はこちらを覗き込んできたターカスをゆっくりと見上げて、こう聞いた。

「ねえ、ターカス…マリセルが…心配してやしないかしら…?」

ターカスはちょっと気まずそうに表情を堅くすると、私たちが掛けたテーブルの真ん中あたりへ目を落とした。

「それに、叔母様も…置いてきてしまって、探してはいないのかしら…?」

突然ターカスは顔を上げて私を見つめ、なぜかとても驚いたように目を見開いていた。

「ターカス?どうしてそんなに驚くの?」

居なくなった家族を探す。それってそんなに変なことかしら…。

それからターカスは、驚いただけではなくて、だんだん悲しそうになっていき、とうとう彼の目には涙のランプサインが表れた。

「お嬢様は、お戻りになりたいのでしょうか…」

そう言った時のターカスは本当に今にも消え入りそうに肩を落としていて、「心配だから、少しだけ様子を見たい」というだけのことも言えなかった。


そうよ。私たちは、お屋敷に帰ってしまえば離れ離れに引き離されてしまうんだもの。帰らないわ。

“でも、マリセルや、叔母様は、私を探していないのかしら…?ここには誰も来ないし…もう私たちが家出して何日も経つのに、それはちょっと変だわ…”

私は胸の内に疑問を隠し、泣きそうにしていたターカスに「バステマが食べたい」とだけ言った。