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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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314.天然と養殖



 すっかり寒くなった。

 お茶をいれ、茶菓子のせんべいを2、3枚つかんで、縁側の一角に座り込む。ちょうどいいひだまり。寒くなったとはいえ、まだまだ日が照ってさえいればぽかぽかして気分が良い。

 そういえば最近、ヒーターの熱が苦手になってしまった。ああいった熱は、どこか暖かさがとがっている気がする。うまく説明できないが、暖かさがまろやかではないのだ。もちろん、さらに冷え込んできたらそんなことは言ってられないが。

 思えば、夏場もそうだった。エアコンなどを付けた部屋で長い時間、書き物などをしていると、必ず頭痛やはき気を催したものだ。それが嫌で、やはり縁側で心地の良い風が吹くのを待ちぼうけていた。結局、季節が正反対でも、やってることは変わらないのだ。

 昨今、うなぎなんかは天然物か、養殖物かなんて議論があるらしい。私はそこまで舌がこえていないので、この件については伝聞でしか話のしようがないが、やはり養殖のほうが脂が乗っていて食べごたえがあると聞いた事はある。反対に天然のほうは身が締まっていたりと、そちらはそちらで長所があるのだろう。

 別に、二択としてどちらかに肩入れなんかしなくてもいい。ちょうどいいときにちょうどよく使いわけましょうや。せんべいをすっかり食べてお茶も飲み干した私は、お茶のおかわりともう数枚のせんべいを手中に収めるべく、ひだまりから立ち上がった。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔