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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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349.地獄のクイズマスター



 俺はクイズと、クイズを出題する奴が大嫌いだ。

 なぜかって? クイズを出す側の立場が上、という空気がある気がするから。

 クイズ出題者はいつも偉そうで、こちらが答えを言った後、これまた偉そうに正否を発表する。だがお前のその正解は、本当にその正解なのか? 絶対に正解であると、奢り高ぶっていやしないか? 歴史や天文の世界などは、新発見によって一夜にして常識が覆ることもある。昨日調べた正解が、今日不正解に変わることだってあるのだ。そういう可能性を顧みることもせず、出題者という立場に胡坐をかいて偉そうに正解を披露する。そんな、常に出題者側が上で解答者側が下というクイズの図式と、そこに安住してふんぞり返っている出題者の傲慢さが許せないのだ。

 だから俺は、クイズ選手権に出場することにした。クイズが嫌いなのに何故? と問われるかもしれないが理由は簡単だ。出場することで、クイズ出題者の傲慢さをぶち壊してやろうと思っているのだ。
 俺は順調に予選を勝ち進み、決勝へと駒を進める。ここからは、少し変わった方法で回答することにした。

 ピンポーン!
「はい。エントリーナンバー3265番の成田さん」

「今の問題、序盤がクイズに全く関係ないいわゆる『ひっかけ』問題と言う奴ですけれども、正直ひっかけとしては上手な方ではありませんね。この問題だと後々のパターンが予想しやすくなってしまう上に、問題の読み上げ方、抑揚が特徴的だったためにひっかけであることが予想できてしまう。この程度の問題が決勝に出てくるようでは問題製作者の能力もたかが知れていますね。というわけで答えは屈斜路湖」

「……正解です」

 ピンポーン!
「はい。成田さん」

「この問題、ずいぶん悪問ですねぇ。まず国府台合戦がそもそも第一次、第二次とあるんですよ。その上第二次国府台合戦は、正月を挟んで永禄6年から7年にかけて行われています。なのでこの合戦のあと北条配下に加わった里見家の武将は誰という問題ですけど、何人か該当してしまうんですよ。まあ恐らくは『正木時忠』が正解でしょうけど、『土岐為頼』辺りも十分正解ですよね。まあ彼の場合は、合戦中に北条方についたという認識なんでしょうけどね」

「……ご指摘ありがとうございます。正解です」

 ピンポーン!
「……成田さん」

「これ、優勝者を決める最後の問題なんですけれども、あまりふさわしくないなと思います。まず設問自体が短すぎる。これではラストの問題に特有の緊張感というものを、あまり長く保つことができないんじゃないでしょうか。それだけではありません。シンキングタイムのときに流れるBGMが少々間延びしている、というかあまり合っていない気がするんですよね。こういう状況で考えろと言われても、正直考えづらいですよ。ああ、答えはトリニダード・トバゴ」

「……優勝、おめでとうございます」

 こうして俺は、選手権に優勝した。それだけじゃない、目論見通り今回のクイズ選手権をぶち壊しにすることができた。つまらない解答者による歴代一つまらない勝負として、歴代最低視聴率を更新したのだから。

 俺はこのやり方でクイズ番組を総なめして、すべてのクイズ番組と出題者を地獄に叩き落してやる。そう心に誓い、会場を後にした。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔