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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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260.踊れ



 踊れ、踊れ、踊るんだ。

 僕の手で、君は狂ったように踊り続けろ。僕の気が済むまで、いつまでもいつまでも。
 逃げようとしたって無駄さ。ここから逃げられないことは、君だって十二分に分かっているだろう。このまま君は、されるがままでいることしかできないんだ。
 ほら、ほれ、どうだ。君はさぞかしここから逃げ出したいだろう、この苦痛から逃れたいだろう。でも結局は僕のところに帰ってくるしかないんだ。さあ、観念して運命を受け入れるんだね。
 おっ。それが君の精一杯の反撃かい。たしかにちょっと驚いたよ。けど、大勢に影響はない。僕には君の体当たりなんて、痛くもかゆくもないんだから。
 さあ、泣け、喚け、叫べ、逃げ回れ。そしていっそのこと、おかしくなってしまえ。君が踊り疲れてどうなってしまおうが、僕はこの手を止めることはないんだから。


「なあ、電気のひもでシャドーボクシングしながら、何をぶつぶつ言ってるんだ?」


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔