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端数報告2

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   ※個人の感想です
 
の話なんだが通販の番組で、これとか、
 
   ※効果を保証するものではありません
 
とか、
 
   ※個人差があります
 
とかいうテロップが画面に出るようになったのはいつ頃からであったろうか。『個人の感想です』とか言うけどこれも嘘で、正しくは、
 
   ※台本に書いてあることをわざとらしく言っています
 
と書くのが正しかろう。※演技です。※ヤラセです。※仕込みです、と。※これは通販の番組ですよ。ショーです、と。普通一般の脳神経の持ち主ならば、アーノルド・シュワルツェネッガー型ターミネーターの視野のように、通販番組の出演者が何か言ったら、そのたびいちいち、脳内画面に、
 
   ※台本に書いてあることをわざとらしく言ってるものだ
 
の文字が点滅するはずだ。おれもそうだが、たまにシステムが暴走し、警告を無視してものを買っちゃったりすることもある。たいてい期待外れのものが届くが、しかし同時に、
 
「やっぱりな。どうせこうだと思っていたよ」
 
とも考える。しかし世の中、
 
「テレビじゃああ言っていたのに違うじゃないか! カネ返せ!」
 
と本気で怒って噛みついてくる人間が何百万もいるという。だから通販番組は、あのようなテロップを出すようになった。
 
のだとわかるが、そこでコロナだ。前回おれは、
 
「感染者の割合が昨日は6パーだったのに今日は7パーセントですよ。つまり、すぐにも10パーセントになってしまうということなんです。そうなったら。そうなったら……」
 
「ど、ど、どうなってしまうのですか!」
 
「わかりません。わかりませんが、第2波が来てしまう見込みが非常に高いと言えるのじゃないかと。そうなったら。そうなったら……」
 
「ど、ど、どうなってしまうのですか!」
 
「わかりません。わかりませんが、第2波が来てしまうということは……ああ、いけない! そんなことを許してはいけない。10パーセントにしてしまってはいけないのです!」
 
なんてなことを去年の春に、テレビのニュースが言っているのを一度見た。テレビが検査人数と出た割合を言うのを見たのはおれの場合にあれ一回切りだと書いた。
 
『たぶん4月』とも書いたけれども、ひょっとすると3月かもしれんな。とにかく春だ。いま思うにあのニュースには、画面に、
 
   ※個人の感想です
 
と出すべきだったんじゃないかしらん。その後に割合を言わなくなったのは、ひょっとして、
 
「10パーセントを超えたとき第2波が来ると言ったのに来ないじゃないか! どういうことだ!」
 
なんて抗議が殺到していたからだとか。マジメな人はテレビの言うこと全部そのまま受け取るから怖いのだ。しかしニュースに、
 
   ※個人の感想です
 
と出すわけにいかない。
 
で、おれは前に『コロナについて付け加えることはもうないだろう』と書いて出した後で気づいたんだが、テレビはただの一度でも、
 
   ※ウイルスは意志を持ちません。人を敵として捉え、悪意をもって殺そうとし、そのための戦略を練るということはありません。その点だけは間違えないようご注意ください
 
なんてテロップを出したことがあるだろうか。テレビのニュースキャスターが、ウイルス学者が、池上彰がこの意味の言葉を口にすることがただの一度でもあったろうか。
 
ない。と言っても、池上彰の番組なんかおれは一度もまともに見たことなんかないけど、あのゼイリブは言ってないだろ。言うはずがない。もちろん、
 
アフェリエイト:人類を脅かす新型コロナウイルス
 
この本なんかにも、その意味の文はどこにも書いていないに違いない。
 
それがおかしい。本来、
 
   ※ウイルスは意志を持ちません
 
は、通販番組の
 
   ※個人の感想です
 
のように、テレビを見る人間がそれを間違えることがないようくどいくらいに念を押して強調せねばならない言葉のはずなのだ。おれが昔に読んだ、
 
アフェリエイト:ホット・ゾーン
 
これにも、確かどこかにそう書いてあった。今のコロナ以前に書かれたまともな本には必ずその記述があるはずだ。
 
しかし、去年出た本にこれが書かれたことはないし、電波に乗せて放送されたことはないし、政府が衆に向けて発表したことも、新聞・雑誌に記事が載ったこともない。
 
一度も。間違いなくそのはずだ。おれ自身は去年一年間を通じて、これを見たこと、聞いたことは一度もないと断言できるが、あなたはどうです。触れたことありますか。
 
ないなら、それがおかしいのだ。政府とマスコミは、大衆がコロナが意志を持っていて、明確な悪意のもとに人に攻撃をしかけてきていると思わせようとしている。〈グリコ・森永〉の犯行グループのように戦略を練り、第2、3波と新手を繰り出し、そのたびにより大きな恐怖を世に与えようとしているのだと思わせようとしている。
  
あの事件の時と同じに。しかしグリ森の犯人達は、あるとき不意にピタリと動きをやめてしまった。それはなぜかと言われている。
 
おれには世間が言うのとは別の考えがこれにもあるが、コロナが自然消滅するならこれも、ある時を境にして不意にそれまでの〈テロ攻撃〉をやめたかのように人に見えるだろう。コロナは意志を持ってたはずだ。戦略を持ってたはずだ。それがなぜ、と人は言うだろう。だってあんなに感染が拡大していたんだから。テレビが感染が拡大してる、感染が拡大してると言ってこれは非常事態だとわめき叫んでいたんだから、と。
 
  感染が拡大するとなぜ非常事態になるのか。
 
その説明はない。けれども、感染が拡大すると非常事態なのだ。コロナが意志を持っていて、戦略を持っているなら感染が拡大すると非常事態だ。説明はないが。
 
『感染が拡大すると非常事態』という考えは、コロナが意志を持っていて戦略を持つときにだけ成立する。そうでなければ冬は風邪の季節だから風邪が流行しているだけだ。人が死んでも風邪をこじらせ死んだというだけのことだ。説明すると非常事態なんかでないのがわかってしまうため説明できない。
 
だからその説明はせず、感染が拡大したから非常事態ということにする。そうすりゃ、人は、コロナはグリ森の犯人達のように何するかわからぬやつらで次の手を仕掛けてくるのだと思ってくれる。非常事態だ。非常事態だ。
 
という寸法。しかしコロナが意志を持たないただの風邪だと、通販番組に、
 
「テレビじゃああ言っていたのに違うじゃないか! カネ返せ!」
 
なんて電話を掛けるような人達に、
 
「テレビじゃああ言っていたのに違うじゃないか! どういうことだ!」 
 
と言われてしまう。マジメな人はテレビの言うこと全部そのまま受け取るから怖いのだ。だから今年になってテレビは、
 
   ※寒さが厳しくてもよく換気しましょう
 
と言い出した。マジメな人はこれを【窓を夜通し全開にしろ】という意味だと受け取る。
 
厚労省はそれが狙いで、これを言い出したんじゃねえのか? おれは去年8月の一時増加のときにテレビが、 
「三日続けて死者十数人! 第2波だ、これは第2波です!」
作品名:端数報告2 作家名:島田信之