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端数報告2

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マスクメロンよりマンダリンオレンジだろうというお話


 
観点! 声が小さい、観点! 街を政治家の街宣カーが、「感染をしない、させない。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点を持ちましょう」と唱えて過ぎていく。するとたまたまそのクルマが神社に入ってくのが見えたので、なんだろうと思い覗いてみると、議員さんが賽銭箱にドサドサ札束をブチ込みながら、
 
「どうかワタシの支持者以外、全部コロナで殺してください! せっかく減った人口です。ワタシとワタシを讃える優秀な人間だけの新しい社会を作らせてください!」
 
とわめき叫んでいる。すげえなあ、と思いながらしばらく見ていた。しかし『せっかく減った人口』と言うが、日本全体でタッタの1500人。おれが小学校の頃に住んでた栃木県の宇都宮市で死者はふたりというところだろう。
 
中学・高校と住んでいた茨城県の下妻市にはたぶんひとりもいないだろう。おれがいま住んでる町にひとりでもコロナで死んだ者がいるかあやしいもんだ。
 
アフェリエイト:下妻物語
 
と思いながらしばらく見ていた。だいたい、ひとりでもいたならば、遺族の家が、
 
アフェリエイト:それでもボクはやってない
 
この映画で加瀬亮演じる〈ボク〉を支援していたエキストラみたいなやつらに囲まれて「感染者は出てけ」と叫ばれ、石やタマゴが飛んでたり《お前もコロナで死ね》という落書きだらけになっていたりするんじゃないのか。
 
と思いながら見てたんですが、違うんでしょうか。だいたい、そのような小説を、
 
粧説帝国銀行事件
https://syosetu.org/novel/234452/
 
として始めたとこなんですが、そんなわけで今回もまた帝銀事件の話である。
 
でもその前にコロナウイルスの話である。コロナについてテレビで学者が言うことは皆バラバラだ。おれは最初からカケラも信じていなかったからバカにしながら見てたんだが案の定、ひとりの学者がうんぬんかんぬん言ってたと思うと次の日には別の学者が、映画『アルキメデスの大戦』の主人公・歩目死男みたいな顔で、
 
「コロナについてこんな説を唱える人がいるようですが、それには重大な欠陥があります。○○の想定が甘い! もし○○○○が、○○○○だった場合、○○○○に発展する可能性があります。○○○○○○○○○○○○○○○○○○・」
 
と、そんな具合に早口で専門用語を並べてまくしたてていたと思うと急にこちらを向いて、
 
「最悪の場合、人類絶滅」
 
と言う。これがまたまた歩目死男そっくりなんだが、池上彰がスタジオで、
 
「そんなことが起こったら、テングー以来の大惨事ですね」
 
とニコニコ顔で言う。お前、あいつの話がわかったのかよ。グニャラグニャラと要領の得ない、説明にならぬ説明をしていたようにしかおれには見えず、ただ『アルキメ』で橋爪功演じる海軍少将・嶋田(ヤな名前だな。まだ〈島田〉じゃないだけいいけど)みたいに、
 
「何が言いたいんだ」
 
とだけ思っていたぞ。
  
「それはあなたの頭の出来が悪いからじゃないですか」
 
ウン、まあね。それについては、否定はしないよ。おれはたいして勉強ができた人間じゃない。けれどもテレビに出る学者が皆、
 
「コロナについてこんな説を唱えている人がいますが、それには重大な見落としがあります。ワタシが明らかにしたところによると……」
「コロナについてこんな説を唱えている人がいますが、それには重大な見落としがあります。ワタシが明らかにしたところによると……」
「コロナについてこんな説を唱えている人がいますが、それには重大な見落としがあります。ワタシが明らかにしたところによると……」
 
こんな言い方をすることには、〈禍〉というものが始まった最初の頃から気づいている。
 
学者がどいつも、福山雅治主演の『ガリレオ』や、歩目死男を演じていたナントカみたいに黒板に向かい、チョークでカッカと書きつけながら説明する。何を言ってるかわからないが、全員が、
「他の学者はああ言ったりこう言ったりするがみんな間違っている。自分が明らかにしたところでは……」
という話をしてるのだけはわかる。ただ、内容がわからないのでどうして海が南北に集まり凍って……いやそれは、他のサイトにおれが出してる小説の話だったけれど、とにかくだ。ひとりひとりの言うことがみんな違っているのはわかる。しかし全員、急にクルリとこちらを向いて、
 
「最悪の場合、人類絶滅」
 
セントエルモの灯
https://2.novelist.jp/68292.html
 
と言うのだけは同じなので、テレビを見る普通の人は、
『そうか。学者という学者がみな同じことを言っている。やはり人類はコロナで絶滅するんだ』
と頷いてしまうのがわかる。大変だ。大変だ。
 
オレにできることをしなければならない。感染者の家を見つけて石を投げつけに行かねばならない、と。
 
それで問題をターミネートできると普通の人間は考える。〈ターミネート〉の意味は【最終的解決】。ジェームズ・キャメロンが使った意味ではそうだ。池上彰は名前の通りに池の上の彰人だが、ボクは無力な池の中の小鮒だ。雑魚だ。ザコのボクがこの人類存続の危機にできることがあるとすれば、感染者に石を投げるくらいだろう。ボクが石を投げることで人類が救われる。コロナ問題に最終的な解決をつけられる。ならためらわず行うべきだ。
 
そうだろう。ゆえにボクの考えは正しい。
 
正義だ。
 
と考える。困ったことにこれが普通の人間なのだ。神は我を見ていてくださる。感染者に石を投げるこの行為を見ていてくださる。だからこの〈禍〉の中にあっても、我の命を神はお救いくださるだろう。
 
と考える。困ったことにこれが普通の人間なのだ。テレビで学者が言ってたことの細部を考えてみようとしない。考えようにも、急にクルリとこちらを向いて、
 
「最悪の場合、人類絶滅」
 
と言ったそこだけしか、理解できる部分がないから。
 
ウン、学校で勉強できると、かえってそうなるよなあ。学校で優秀だったんだから、社会でも優秀でなきゃいけないと思うよなあ。だから世間には逆らわず、弱い人間に対して差別だ。おれも学者の言うことは、何がなんだかサッパリわからん。けれども、普通と違うことに、ひとりひとりの言うことがてんでバラバラなのがわかる。
 
だって全員、
「コロナについてこんな説を唱えている人がいますが、それには重大な見落としがあります。ワタシが明らかにしたところによると……」
という言い方をするんだもん。みんなバラバラとわかるじゃないかね。急に突然、『アルキメデスの大戦』の歩目死男みたいにこちらを向いて、
「最悪の場合、人類絶滅」
と言うところが同じだからと言って、『やはり人類は絶滅するんだ』と思ってしまうのは間違いじゃないのか。
 
『アルキメデス』の歩目死男は、
 
「(会議は)まだ終わっていません。平山造船中将の計画案には、重大な欠陥があります」
 
と叫んでなんやかんや言い、
 
作品名:端数報告2 作家名:島田信之