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端数報告2

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これはいつまで続くんだというお話


 
マスクはウイルス感染の拡大防止器具でない。脳神経の思考停止ギアである。今この国でこれを着けた人間は、映画『ターミネーター』のサイバーダイン101型ターミネーターのように視野が真っ赤に染まり、あの有名な〈F〉で始まる言葉のように、
 
《新型コロナウイルス感染拡大防止の観点を持て》
 
の文がピカピカと点滅する。そうなるともう『その観点を持たねばならない』ということ以外に何も考えられなくなる。
 
ロボットだ。でも「観点を持て」と言っても、どうすりゃいいかわからないからやることと言えば感染者差別だ。〈皿田粉子(さらだこなこ)〉という老女がコロナで死んだと聞けば、その遺族もターミネートせねばならない。その息子に石を投げれば人類は救われるであろう。
 
アフェリエイト:ターミネーター
 
普段くだらんテレビやマンガばかり見ていて、考えることをしない者は、イザというとき物を考えろと言われてもそんな考え方しかできない。自分がやっていることは、感染者差別でなくて正義の行為だ。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からやることなのだから、これが正しくないわけがない。
 
ワタシは池上彰の言葉を正しく守っているだけなのだ。池上彰は『ボクの言うことを守っていれば第2波が来ても死にません』と言っている。それをワタシは正しく理解し実践している。それを邪魔立てしようとするな。邪魔をするのは人類社会そのものの敵だ。
 
――と言うだけになる。この相手に「感染者差別をするな」と言うのは、ライオンに「肉を食うな」と言うのと同じ無駄なことだ。
 
『ゼイリブ』の喧嘩場面はなぜ10分もあるのだろうか。
 
アフェリエイト:ゼイリブ
 
『ターミネーター』ならば誰もが繰り返し繰り返し見て、細かい部分もよく憶えているだろうが、誰も『ゼイリブ』を憶えていない。おれもよく憶えていない。『ゼイリブ』と言えば、モノクロの画面の中に《OBEY》の文字が黒々と、
 
粧説帝国銀行事件
https://syosetu.org/novel/234452/
 
こんな感じに映し出される光景と、10分間も続く喧嘩のシーンがあった。それは最近の『アルキメデスの大戦』で、主人公の歩目死男が、
 
「(会議は)まだ終わっていません!」
 
アフェリエイト:アルキメデスの大戦
 
と叫んで始まる高波の話のように唐突に始まりエンエンと続く。それはあまりにエンエン、エンエンと続くので、『アルキメデス』で橋爪功が演じた海軍少将・嶋田(ヤな名前だな。まだ〈島田〉じゃないだけいいけど)のように、
 
「何が言いたいんだ!」
 
と言いたくなるけれど、なおもエンエンと続く。『ゼイリブ』と言えばあれしか思い出すことができないので、あの話がそれからどうなり、そして結末がどうなるのかおれの記憶にまったくないのだ。
 
OBEY. OBEY. OBEY. OBEY......考えるな、マスクだ。考えるな、マスクだ。池上彰がそう言うので、みんな従う。従うしかない。ウイルスには意志がある。戦略を持つ。第2波だ。ゼイリブ。THEY LIVE. 知らないうちに、我々の中に紛(まぎ)れ込んでいる。皿田粉子だ。叙吽粉夫(じょんこなお)だ。感染者は社会の敵で、人類の脅威だ。なのだから、見つけ出してターミネートせねばならない。
 
あるいは、浄化。あるいは、消毒。言葉はなんとでもつければいいが、とにかくそれは差別ではない。浄化だから差別でない。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から為されることはなんであれ正しく、決して間違うことがないのだ――なんてなことをいい気で言っていい気になるのは好きにすりゃいいが、実のところ何をどう見てもマスクが役に立っていない現実をどう受け止めればいいと言うのか。
 
マスクが役に立ってないのになぜマスクを信じるのか。
 
池上彰が「とにかく何も考えるな。OBEY. OBEY」と言ってるからか。
 
「結局のところどうなんです。マスクは役に立つんですか、立たないんですか」
 
そう聞いても、池上彰は、
 
「そういう問題ではないのです。これは観点の問題なのです。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点。だから、マスクは着けねばならないのです」
 
と言うだけ。「それは答になっていない。役に立つのか立たないのか」と問い返す者はいないので、
 
「わかりましたね。観点、観点。何も考えずマスクです」
 
の主張が通ってしまう。それが池上彰がやっていることだ。
 
『ゼイリブ』のエイリアンと同じだ。
 
と言っても誰も見てないか、見ても憶えてないだろうが、かく言うおれもよく憶えてるわけではないのでお互い様だ。池上彰の顔はどう見ても宇宙人だ。おれはあいつを最初に見たとき「あ、宇宙人」と思ったし、見れば見るほどあれは宇宙人である。どうして誰もあれがこの星の者でないのを気づかず指摘しないのだろうか。
 
操られてるんじゃありませんか。
 
とにかく『ゼイリブ』。OBEY. OBEY. あれはそういう映画だった。一応、それだけは憶えてるのだが、後はあの喧嘩の場面だ。あれはどうして10分間も続くのだろうか。止めるやつはいなかったのか。この〈コロナ禍〉と呼ばれるものにいつか終わりは来るのだろうか。
 
まあ終わりはあるんだろうが、案外さ。来年にはコロナに変わって別の風邪が流行して、それで終わったりするんじゃねえの。だって風邪ってそういうもんじゃん。去年の風邪と今年の風邪、来年の風邪は違う風邪。人には同じ風邪に見えてもウイルスによって違う風邪。だから今年はコロナの風邪でも、来年に来るのは別の風邪。
 
なんじゃないの? 違うのかな。コロナはただの風邪じゃない? 何を根拠にあなたはそういうことを言うの。池上彰が「風邪じゃない」と言ってるから?
 
いや、風邪は風邪だろう。で、やっぱり別の風邪で日に4、5人ずつ死んだりして、
 
「どういうことだ。コロナより恐ろしいウイルスということなのか」
 
「いえ、これは〈インフルエンザT-1000型〉というやつですね。1991年に一度流行したやつです。そのときは2000人死にました」
 
「に、にせんにん? 去年のコロナより多いじゃないか。全然騒がれた憶えがないぞ」
 
「騒がれませんでしたからね。風邪をこじらせた肺炎で千や二千は毎年死んでいるもんなんです。騒がれるわけがないでしょう」
 
「え? え? え?」
 
「2003年には〈T-X型〉という風邪で結構死にました。〈T-1000〉と〈T-X〉、このふたつは1985年のサイバーダイン101、〈インフルエンザT-800〉とも言いますが、これが変異したやつでして、なんだかんだ言ってこの元祖が〈スペイン風邪〉以降の風邪でいちばん強い。3000人殺しています」
 
「コロナの倍じゃないか! どうして騒ぎにならなかったんだ!」
 
「だから、風邪の肺炎で日に何人か死ぬのは当たり前なんですよ。『ただの風邪だからと言って甘く見るな。風邪は本当は怖い病気だ。肺炎になって死ぬ者が毎年たくさんいるんだぞ』っていう言葉、聞いたことがないんですか?」
 
「2000人か3000人くらいのもんだと思っていた」
 
作品名:端数報告2 作家名:島田信之