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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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221.信心



 先日、とある言葉を調べていました。

 「いわしの頭も信心から」という語の意味を、あらためて知りたかったのです。そのため、検索サイトのテキストボックスにこの語を入力し、検索ボタンを押したわけです。
 最近の検索サイトは便利になっていて、ことわざなどは、まず最初に意味が表示されるようになっています。強調スニペットなどと呼ばれるようですが、あまり詳しいことは分かりません。それはともかく、私は、表示された言葉の意味を読んで驚いたのです。

『イワシの頭のようにつまらないものでも、それを信心の対象とする人にとっては、非常に尊く思われるということ』

 果たしていわしの頭っていうのは、そんなにつまらないものなんでしょうか。少なくともこの言葉の定義のように、つまらないものだと言い切ってしまっていいのでしょうか。私が最初に感じた疑問はこれでした。
 もしかしたら、いわしの頭から、人間にとって有効な成分が今後発見されるかもしれないし、今現在、何らかの形で役に立っている可能性もあると思うのです。それを、つまらないものといとも簡単に断じてしまっている、そこがちょっと違うのではないかと思うのです。

 私は弱いものの肩を持つという、少々面倒な癖があり、このときも、つまらないものと一方的に指弾されたいわしの頭を応援したくなっていました。小さい頃から、おまえは駄目なやつだ、と言われ続けてきたせいなのかは分かりませんが、弱いものや劣勢に立っているものに、どうにかして強いものを打ち破ってほしいという気持ちを持っているのです。
 そういうわけで、つまらないと決めつける身の程知らずな人間どもに一矢を報いてやりたい。いわしの頭の素晴らしいところを発見して、今までの無念を晴らしてやりたい、そう思ったのです。

 早速、私といわしの頭の報復が始まります。といっても、検索サイトにワードを打ち込むだけですが。

 まず、ひいらぎいわしというのが最初に出てきました。節分に門前に飾るものだそうです。何でも焼いたいわしの頭で、鬼を呼び寄せ、ひいらぎのトゲで傷をつける、という魔除けの機能を有しているようです。これはなかなかの活躍ぶり、と言ってもいいのではないでしょうか。
 次に某料理サイトを探します。直後に見つかる「いわしの頭の唐揚げ」のレシピ。いわしを丸々一匹用いた梅煮なんてのもあります。もうよだれが止まりません。この他にも、頭もバリバリ食べられるなんていう景気のいいワードが並びます。彼らは食卓にも、しっかり居場所を得ているようです。
 最後に、いわしの頭の成分を調べます。脳の成長にいいDHAやEPA。骨や歯にいいカルシウム。その他豊富なビタミンが含まれ、生活習慣病の予防に最適な食材。と非常に力強い言葉が並んでいました。
 これはもう、立派に結果を出していると言っていい気がします。私は既に、彼らに信心を抱きたくなってきました。いわしの頭バンザイ!!


 でも、ここにきて、一転、私は心配になります。
 もしかして、このことわざで大したことないやつだと思わせて、実は彼らは人間を征服しようとしているのでは……。

 今度はがぜん、人間の方を応援したくなってきました。人間の素晴らしいところはと……。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔