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狐鬼 第一章

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「こんな事になるなんて、ごめんね」

今夜の出来事を詫びる彼は
四面、硝子のない角灯を恨めし気に眺めた

「森の中、灯りなしだけど平気?」

「僕は問題ないけど」と付け足す彼にすずめは頷くと
今夜の出来事を話題にする

「祭りの事は吃驚したけど、平気」

祭りは巫女の言葉通り、散会
舞台裏に捌けた少女の代わりに母親が深く頭を下げる中
溜息と嘆息が交じる人波に乗り、二人は稲荷神社を後にした

田舎町の外灯が照らす
明かり乏しい夜道を足取り遅く、帰宅する

祭りの興奮は若干、落ち着いたが
其れでも腰は心許無く、歩くだけでも難儀だ

「結局、祭りって神狐様の集会って事?」

聞き難い事はさり気無く聞くのが一番、良い

思う、すずめに彼は頷く

「そうだね」
「神狐様を信仰する信者達の、集会だね」

「たかも、たかも信者なの?」

信者でなければ祭りに参加する理由が分からない

だが、意外にも彼は頭を振って否定する
軽く笑いながら、言う

「違うよ」

其れなら何故、祭りに参加したのか?
堂々巡りするも問い質す事等出来る訳もなく、彼女も笑い返す

「そっか、そうだよね」

そして白狐と対峙した、あの瞬間を思い出す

「私は腰が抜けちゃったけど、たかは怖くなかった?」

見た限り彼は平気そうに見えた
自分だけ逃げる事も出来たのに彼はそうしなかった
其れは優しさなのか、其れとも

そんな思いを隠しながら、すずめは彼の横顔を見上げる
刹那、彼の唇が吊り上げる

「怖くはないよ、すずめ」

「え?」

「怖ければ其れよりも強くなれば良いだけの話しだよ」

何処かゾッとする微笑みに彼女は戸惑うも疑問を声に出す

「神様より強くなれるの、人が?」

彼は彼女に目も呉れず否定する
見詰める視線の先、満月の光が影を照らす

「人では無理だよ、すずめ」

思わず立ち止まる
気付かず、歩き進める彼の背中を眺めた

じゃあ、たかは何になるの?
人間であって神様が怖くない、と云う彼は一体、何ものになるのだ?

遠ざかる彼の背中に向かって問い掛ける

「じゃあ、たかは何で怖くないの?」

京都に来てから不思議な事ばかり
森が怖い、聞いた事もない声が聞こえる
今宵の不可思議な祭りのせいで自分の頭は麻痺しているのかも知れない

たかが怖い

こんな事を思うのは馬鹿げている
今日一日、炎天下を歩き続けたせいだ
今夜一晩、深い眠りに身を任せれば明日は元通りの思考に戻る筈

そう思う自分をすずめは頭を振って追い出す

明日になれば
明日になれば祭りの事を如何、理解するのだろう?

「信じていないモノを怖がるなんて無理だよ、すずめ」

何時の間にか立ち止まり振り返っていた彼が続ける

「罰が当たる」
「そんな言葉、信じていない人にとっては唯の偶然で片付く代物だよ」

其れは無理だ
白狐の姿を目の当たりにして信じない?
其れは無理だろう

だけど彼は信じないのか?

分からない
意味が分からない

立ち止まったまま
歩く気配のない彼女に彼が柔らかい笑顔で言う

「帰ろ」

促されるも動かない
彼が無言で差し出す手を握り、彼女は漸く歩き出す

作品名:狐鬼 第一章 作家名:七星瓢虫